能力を失った聖女は用済みですか?
「私は初めて見る……キドニー集落の人も恐らくそうだろう。カイエン様は知っておりますか?」

シスルが後ろを振り返ると、そこにカイエンがいた。

「は?何のことだ?」

「これ、プリンって言うんですけど、知ってますか?」

今度はカイエンの目の前にプリンを出してみる。
すると、カイエンはあっさり首を振った。

「知らないな。でも、旨いんだろ?ルナが作ったんなら、何でも旨いに決まってる」

「え、き、決まっ……てませんよ!まだ誰も食べてないので味は保証しかねます」

「誰も食べてない?ひょっとしてオレ達を待っていたのか?それは悪かった!じゃあ、早速皆で食べよう!」

カイエンの声を聞いて、サリューや子供達が歓声を上げた。
王様達が働いてるのに、自分達が先に食べるわけにはいかないと、集落の人達は頑なに言い、子供達にも我慢するように言ったのだ。

王様のお許しが出たので、みんなは広場の中央に集まって、一斉にプリンを食べた。
隣に座るカイエンは、その様子をスプーン片手に眺めている。

「カイエン様、毒味をしましょうか?」

私は尋ねた。
まだ少し心配なのかもしれない、と思ったから。

「いや、必要ない」

「……本当に?」

「ああ。ルナの作ったものは、他の誰が作ったものより旨くて安全だ……信じてるからな」

カイエンはにっこりと微笑み、プリンを一口食べた。
それと同時に、至るところから幸せそうな声が聞こえてくる。
子供達は遠慮なく平らげて2個目に突入しているし、大人は味わうようにゆっくりと堪能する。
中でも、私は老人達の声に注目した。

「甘いねぇ、それに、とても滑らかだ」

「舌触りの良いこと……私のような歯が弱い老人でもすんなり食べられるよ」

老人達は、噛み締めるように言った。
彼らの感想は、とても参考になる。
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