能力を失った聖女は用済みですか?
「何だと!?勝手にシャンバラに入って我が民を連れ去るなど許しがたい!今すぐ追うぞ、シスル!まだ追い付ける!」

「はいっ!全員、馬の用意!全速力でロランの兵を追う!」

「はっ!」

第一部隊は瞬時に集落入り口へと向かう。
それを見て、カイエンが神妙な面持ちで振り向いた。

「ルナはここにいろ」

「あ、あの……私……」

咄嗟に、一緒に行きます!と言おうとした。
でも、やめた。
私がいると、その分だけ速度が遅くなる。
足手まとい……なのだ。

「はい……」

私が頷くのを見て、カイエンは入り口を出ていった。

「お嬢さん、顔色が良くないね。心配なのかい?」

「ナヤンさん……ハシムさんは、何も喋らなかったんですよね?一言も?」

「何も言わなかったよ……これはワシの想像だが、ハシムは、知っているが言うものか!という様子に見えたな。何かを守っとる、そんな風に」

ナヤンは腕を組み溜め息をついた。

「ハシムは頑固なんだ。言わんと決めたら死んでも言わん。だから心配なんだよ。ロランの兵士に酷いことをされなきゃいいが……」

ナランはまだ何かを話していたけれど、私の耳には入ってこなかった。
ほんの短かい時間、言葉をかわしただけ。
他人でしかも、他国の聖女。
シャンバラのことを助けに来なかった悪名高い聖女のことなんか、さっさと喋ってしまえばいいのに。
私のせいで……捕まった。
私のせいで……。

「お嬢さん?」

私の様子がおかしいのを、訝しむナランが覗き込んできた。

「……私……」

「ん?どうしたね?」

「ちょっと、外の空気を吸ってきますね!なんだか、疲れちゃってー」

「おお!そうだな。顔色も悪いし、外で少しゆっくりしておいで」

優しく笑うナランに頷き返し、私は早足で外へ出た。
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