能力を失った聖女は用済みですか?
乾いた大地の向こうに、見覚えのあるロランの国境が朧気に見えてくると、ディアーハが声を上げた。

「いたぜ!このまま突っ込んで回り込むぞ!」

「うんっ!」

恐ろしい早さでロランの兵に追いつくと、余裕をもって旋回する。
そうして、彼らの前に立ちふさがったディアーハは威嚇の雄叫びを上げた。

「グオォォォー!ガルルル……」

突然前を塞がれたロラン兵は、怯える馬を宥め後ずさる。
兵は二人。後ろにいた兵の馬に、縄で縛られたハシムが乗っていた。
疲れ果てているけれど、怪我などはしていない。
彼は私とディアーハを見て驚いているようだった。

「なっ、聖獣だと……では、聖女様か?」

前にいる兵士が叫ぶ。

「そうです!あなた達の捕えたシャンバラの方を離してくれませんか?」

「ええ、もちろんです聖女様。あなたが私達とロランへ帰るなら、こいつを解放しますよ」

兵士達は馬から降り、ハシムを下ろすとその喉元に剣を突きつけた。

「何をするんですか!」

「何をって……聖獣をこちらにけしかけられても困りますから。あなたを拘束するまでこいつは人質です」

「……わ、わかりましたから、その人を傷付けないで」

ディアーハに目配せすると、彼は私の意を汲んで姿を消した。
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