能力を失った聖女は用済みですか?
それを見た兵士達がニヤリと笑うと、突然ハシムが叫んだ。

「何で来たんだ!?薄々理由(ワケ)アリなのはわかっていた。ロランに帰りたくないんだろう?ワシのことはいいから早く逃げなさい!」

「ハシムさん……ご迷惑をおかけしてすみません。確かに理由(ワケ)アリです……でも、私誰かを犠牲にして逃げたくない」

「そんな泣きそうな顔をして言われても、何の説得力もないわ……」

ハシムは力なく呟いた。
……泣きそうな顔なんてしてない。
ただ、楽しかった夢が覚める。
それだけのことなんだから……。
兵士達は、私とハシムの会話を怪訝な顔をして聞いていた。
聖女(私)と老人(ハシム)の関係性がわからないのだ。

「さぁ、聖女様。ゆっくりこちらへ。人質交換と行きましょう」

「わ、わかってるわよ」

兵士達は慎重に一歩近付いた。
これほどまでに警戒しているのは、ディアーハがいるからだ。
ロランの神殿から私を連れて逃げたディアーハ、彼は神出鬼没なのだ。
一歩づつ徐々に、兵士達とハシム、私は歩みを進める。
そして、あともう少しで手が届きそうなくらい近付いた時、夥しい蹄の音が大地に響き始めた。

「なっ、何だ!?」

「土煙が見えるぞ!?」

一瞬明らかに気を取られた兵士の隙を、私もハシムも見逃さなかった。

「ディアーハ!お願いっ!」

その言葉とほぼ同時に現れたディアーハが兵士に飛びかかり、ハシムは察知して身を屈める。
驚いた兵士達は剣を取り落とし、更に尻餅をついた。

「ハシムさんっ!こっちへ!」

私はハシムを引っ張り、後ろ手に庇った。
慌てて立ち上がろうとする兵士達をディアーハが足で押さえつけ動けなくすると、間もなくシャンバラ第一部隊が到着した。
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