能力を失った聖女は用済みですか?
「あのぅ……そう言えばカイエン様?ロラン兵に言ったことは、何かの冗談ですよねぇ?」

「ロラン兵に言ったこと?」

「ほらあれ。妃にした、っていう、あれ」

「うっ……」

カイエンは呻いた。
さっきまで、威厳のある王様だった彼の顔はみるみる赤くなっていく。

「ど、どうしたんですか!?熱でも出ましたか?」

「い、いや……その」

視線を彷徨わせるカイエンの後ろから、シスルが訳知り顔で一歩進み出た。

「ルナさん。それはですね、あのままだと戦が始まりそうだったからですよ?」

「戦……ですか?」

「はい。もともとあなたはロランの聖女。だから、取り戻す為に軍を送り込むという大義名分があります。しかしながら、カイエン様の妃だと言うことになれば、おいそれと手出し出来ない、わかりますか?」

「……あ、そうか!仮にも他国の妃を武力で拐おうなんて、大問題ですよね。なるほど、だからカイエン様は……」

つまり……私の為だったってこと。
さすが若くても王様。
あの短い時間で、ここまで考えていたなんて頭が下がるわ。
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