アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ(修正中)
(今のって、夫婦みたいだったよね……)
夫婦みたいではなく、本当の夫婦になったのだが、なかなか実感が持てなかったアリーシャは内心で興奮していた。
(私もオルキデア様に相応しい妻にならないと。まずは、朝の家事を済ませてしまって……)
軍部に向けて歩き出したオルキデアを見送っていた時、アリーシャの後ろからオルキデアを呼ぶ声が聞こえてきた。
振り返ると、両手に布包みを持ったセシリアが走って来たのだった。
「アリーシャさん。おはようございます。オーキッド様は!?」
「おはようございます。あの、今さっき出掛けました……」
早口で言い切ったセシリアは、アリーシャが指した方を見ると、「ありがとうございます」と言って、またオルキデアに向かって走り出したのだった。
気になって様子を伺っていると、セシリアは両手に抱えていた布包みをオルキデアに渡しているようだった。
何か話しているようだったが、アリーシャの場所までは声が聞こえて来なかった。
(何を話しているんだろう……?)
気になって見つめていると、オルキデアと別れたセシリアが戻って来たのだった。
「あ、セシリアさん……」
「アリーシャさん。先程はありがとうございました」
額に汗を浮かばせるセシリアに、うちで休むように勧めるが、これから仕事があるからと丁重に断られたのだった。
「オルキデア様と何を話していたか、聞いてもいいですか?」
「クシャ様がお弁当を忘れてしまったので、オーキッド様に届けてもらったんです!」
「えっ、クシャースラ様はお弁当なんですか?」
「クシャ様に限らず、結婚されている軍人さんはお弁当を持参されている方が多いと聞いていますが……。オーキッド様から聞いていませんか?」
「はい……」
そもそも、アリーシャがオルキデアの執務室に暮らしていた頃、食事といえば、オルキデアの部下たちが食堂から持って来る食事だけだと思っていた。
階級ごとに食堂があって、深夜帯以外ではいつでも利用できるという話も聞いていた。
「オルキデア様から何も聞かされていなくて……。どうしましょう。今日もそのまま出掛けてしまいました……」
オルキデアに解かれたままの髪を乱しながら、オロオロと慌てていると、「大丈夫です」とセシリアに背中を叩かれる。
「きっと、オーキッド様もアリーシャさんに負担を掛けたくなくて言わなかったんです。それか、オーキッド様自身も忘れていたか」
恐らく、オルキデアの性格的には両方だろう、とアリーシャは考える。
食に興味のないオルキデアのことだから、きっと弁当の存在を忘れていたに違いない。
それでもーー。
「結婚した以上、私も作るべきですよね。でも、お弁当なんて作ったことないですし……」
「結婚したからといって、必ず作る必要はないんですよ……」
「で、でも。オルキデア様に恥をかかせてしまいます! 新婚なのにお弁当も作ってもらえないのかって……!」
「……そう言われても、オーキッド様は気にしないと思います。安心して下さい」
すっかりパニックに陥ってしまったアリーシャだったが、ふとアリーシャの様子に戸惑っているセシリアを見て思いつく。
「セシリアさん!」
「はい?」
「私にお弁当作りを教えて下さい!」
朝日に輝く藤色の髪が地面につくくらい、アリーシャは深々と頭を下げたのだったーー。
夫婦みたいではなく、本当の夫婦になったのだが、なかなか実感が持てなかったアリーシャは内心で興奮していた。
(私もオルキデア様に相応しい妻にならないと。まずは、朝の家事を済ませてしまって……)
軍部に向けて歩き出したオルキデアを見送っていた時、アリーシャの後ろからオルキデアを呼ぶ声が聞こえてきた。
振り返ると、両手に布包みを持ったセシリアが走って来たのだった。
「アリーシャさん。おはようございます。オーキッド様は!?」
「おはようございます。あの、今さっき出掛けました……」
早口で言い切ったセシリアは、アリーシャが指した方を見ると、「ありがとうございます」と言って、またオルキデアに向かって走り出したのだった。
気になって様子を伺っていると、セシリアは両手に抱えていた布包みをオルキデアに渡しているようだった。
何か話しているようだったが、アリーシャの場所までは声が聞こえて来なかった。
(何を話しているんだろう……?)
気になって見つめていると、オルキデアと別れたセシリアが戻って来たのだった。
「あ、セシリアさん……」
「アリーシャさん。先程はありがとうございました」
額に汗を浮かばせるセシリアに、うちで休むように勧めるが、これから仕事があるからと丁重に断られたのだった。
「オルキデア様と何を話していたか、聞いてもいいですか?」
「クシャ様がお弁当を忘れてしまったので、オーキッド様に届けてもらったんです!」
「えっ、クシャースラ様はお弁当なんですか?」
「クシャ様に限らず、結婚されている軍人さんはお弁当を持参されている方が多いと聞いていますが……。オーキッド様から聞いていませんか?」
「はい……」
そもそも、アリーシャがオルキデアの執務室に暮らしていた頃、食事といえば、オルキデアの部下たちが食堂から持って来る食事だけだと思っていた。
階級ごとに食堂があって、深夜帯以外ではいつでも利用できるという話も聞いていた。
「オルキデア様から何も聞かされていなくて……。どうしましょう。今日もそのまま出掛けてしまいました……」
オルキデアに解かれたままの髪を乱しながら、オロオロと慌てていると、「大丈夫です」とセシリアに背中を叩かれる。
「きっと、オーキッド様もアリーシャさんに負担を掛けたくなくて言わなかったんです。それか、オーキッド様自身も忘れていたか」
恐らく、オルキデアの性格的には両方だろう、とアリーシャは考える。
食に興味のないオルキデアのことだから、きっと弁当の存在を忘れていたに違いない。
それでもーー。
「結婚した以上、私も作るべきですよね。でも、お弁当なんて作ったことないですし……」
「結婚したからといって、必ず作る必要はないんですよ……」
「で、でも。オルキデア様に恥をかかせてしまいます! 新婚なのにお弁当も作ってもらえないのかって……!」
「……そう言われても、オーキッド様は気にしないと思います。安心して下さい」
すっかりパニックに陥ってしまったアリーシャだったが、ふとアリーシャの様子に戸惑っているセシリアを見て思いつく。
「セシリアさん!」
「はい?」
「私にお弁当作りを教えて下さい!」
朝日に輝く藤色の髪が地面につくくらい、アリーシャは深々と頭を下げたのだったーー。