未来の種
「美衣子、年末年始のこの時期に普通は手術なんて出来ないんだ。医者も休みだからね。ここでしか、寿貴先生しかやってくれないよ。お前も年が明けたら普通に仕事が始まるんだし、今がチャンスだと思う。」

「昇ちゃん…。
寿貴先生、いいんですか?」

「もちろんだよ。それにね、さっきも少し言ったんだけど、血液検査の結果が気になるんだ。AMHって、聞いたことあるかな?」

もちろん知っている。一通りの事はネットで調べているから。
AMH(アンチミューラリアンホルモン)。発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンだ。この数値が高ければ妊娠可能な卵子が多く残っていて、低ければ少ないという事だ。

「…わかります。」

「…うん。このAMH値が美衣子さんの場合低いんだ。一般的な年齢の平均よりね。AMH値は低用量ピルの長期服用が全く影響しないわけではない。ただ、原因がピルの影響か持って生まれたものなのかは特定できないんだ。」

「…卵子の数が少ないという事ですね?」

それは…かなりの不安要素だ。

「ごめんね。…事実だけをはっきり言うよ。
25歳という年齢で、このAMH値は低い。それに卵管閉塞もある。
…美衣子さん、不妊治療はいつ始めてもいいものじゃないんだ。特に、AMH値が低い場合は妊娠できる期間が短い。今すぐ妊娠を考える必要性がなかったとしても、治療はできる限り早く始めた方がいい。
とりあえず、今回手術をしてみて、卵管の通りを少しでも良くしたいと思っている。
最終的に、体外受精もあるけど、今はまだ若いから、やれる事をやってみよう。」

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