未来の種
「母さん、簡単に言えば、卵子の数だよ。AMH値が低いと、持っている卵子の数が少ないと言うことになるんだ。
卵子が年齢と共に減少していくのはわかるよね? 美衣子の場合、年齢に対して、AMH値が低いんだ。
……つまり、卵管が通ったとしても、卵子がなければ妊娠はできない。
もちろん、少ないだけであって、ちゃんとあるから心配しないで。
ただ、さっきも言ったように、年齢と共に減少するのが普通なんだ。と言うことは、美衣子も年齢を重ねると、さらに少なくなってしまう。
美衣子の場合は、通常より、妊娠できる期間が短いかもしれない、ってことなんだよ。」

理解しているし、自分でも受け入れた事だとは言え、改めて言われると、やっぱり辛い。

「じゃ、じゃあ、今すぐ作らないといけないの? 早い方がいいって事なのよね? 早ければ出来るの?」

「結衣子、落ち着け。
……早ければ出来るかも知れない。
でもな、絶対、と言う言葉は使えないんだ。それはどの夫婦にもどのカップルにも言える事だ。
美衣子は原因がわかった。
そして寿貴先生の診察を受けて、前進している。未婚で今の状況は、珍しいことだ。これはいい事なんだよ。
…昇平、お前のおかげだな。俺達が美衣子にできなかった事を、お前がやってくれた。」
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