すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜
ーside 大翔ー



外来が一段落した所に、ある人が俺を尋ねてきた。



黒いサングラスから透ける釣り挙がった瞳。



明らかに患者では無いことはひと目見て分かった。



「今日は、どうされました?」



動揺しているのを見透かされないように、平然を装うことに必死だった。




「別に、なんともねーよ。



あいつはどこにいるんだ?」




「あいつ?」



どこか。



ほんの少しだけ、沙奈に近い雰囲気を感じた。



どこか、必死に生きている様子だろうか。



まさか…



そんなことあるわけないよな。




「あいつだよ。加須美沙奈。いるんだろ?」



沙奈の旧姓だ。



1度だけ、紫苑から沙奈の旧姓を聞いたことがあった。



だけど、一体どうしてここにいる事が分かったんだ?



いや、そもそもどんな繋がりがあるんだ?



「ふっ。いるんだな、ここに。」



「どなたか存じあげませんが、患者様の情報はお教え出来ませんので。


具合が悪くないのであれば、お帰りください。」




「まあ、そんな急かすなって。



ゆっくり話し合いでもしようや。」




その男は、タバコを取り出し火をつけようとしていた。




俺の診察に立ち会っている看護師は、入職して2年目の若い女の子だった。



青ざめた表情をしていて、彼女も冷静さを保つことに精一杯だった。




「萩原さん、ここは大丈夫だから。



とりあえず、外来師長へ連絡して。あと警備にも。


ここは、俺が対応するから萩原さんは出来るだけ裏で連絡をお願い。」




「は、はい!」




「下手なまねするんじゃねーぞ。


下手なまねしたらただではすまねーからな。」




乱暴な口調で、脅しに入る男。



「あなたの用件は、何でしょうか。」



「沙奈に会わせろ。



いるんだろう?



沙奈は、俺の女だ。さっさと呼んでこい!」




段々と酷くなる男の態度。



机を蹴飛ばす動作。



目を見る限り、薬物依存がある。




きっと、口臭からも酒の臭いがするからアルコール依存でもあるんだろうか。




だけど、どうして分かったんだ。




沙奈がここに入院していることが、どこかで情報漏洩してしまっているのだろうか。




「それは出来ません。


あなたは、なんの権利があって自分の要望が通ると思っているのですか。」




「何回も言わせるんじゃねえよ。



沙奈は、俺に騙された女が作った欠陥品の女だよ。


父親が娘に会うなんて、当たり前だろ?



他人のお前に、俺を止められるとでも思っているのか?」



やはり、この男が沙奈の実の父親なのか。



想像以上に、酷い人間だ。




沙奈はあんなに穏やかで、心も綺麗で優しい子なのに。



本当に、こんな奴と血の繋がりがあるのか?



こんな奴が、可愛い沙奈を深く傷つけてきたのか?



激しい怒りが、俺の中でふつふつと吹き上げてきていた。



彼女を守りたい。



その一心だった。
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