すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜
ーside 沙奈ー



病室へ戻ったけど、大翔先生は中々来なかった。



診察の時間が明らかに過ぎていた。



外来が忙しいのかな?



「紫苑、大翔先生の所に行ってもいい?」



一緒に待ってくれていた紫苑に声をかけた。




「そうだな。珍しいな、大翔が時間に来ないなんて。



どんなに外来が忙しくても、沙奈の診察だけはいつも時間ピッタリで来るのにな。」




大翔先生は、私の診察に遅れたことなんて1度もなかった。



心の中に不安が大きくなっていく。



何かあったのだろうか?



「沙奈、車椅子持ってくるからちょっと待っててな。


冨山さんにも伝えてくるから。」




「うん、よろしく。」



少しだけ髪を整えていると、紫苑が車椅子と吸入器を持ってきてくれた。



「よし、じゃあ行こうか。」



「ありがとう、紫苑。」



紫苑は、ゆっくり車椅子を引いて私は大翔先生のいる呼吸器外来へ降りた。



ねえ…



神様



どうして、私にばかり意地悪をするの?



私は何か、悪いことをしましたか?



私の大切な人を、傷付けることだけは辞めてほしかったのに…




大翔先生のいる、呼吸器外来の診察室の扉を開けた。



「大翔先生、診察…」



目に入った光景に、息の根を止められそうになった。



「お!ちょうどいいや、手間が省けた。」



近寄る父親の姿を見て、私を庇うようにして紫苑が私の前に出てくれた。



「てめえ、何なんだよ?」




「この子の兄ですが。


この子近寄らないで下さい。」



「なんだてめえ!血の繋がりが無いくせに、何が兄だ。


お前、頭おかしいんじゃないのか?」




「たしかに、血の繋がりはありません。


ですが、この子は俺の大切な妹ですから。


戸籍上、もうあなたの子ではありませんから。」




「ふざけんな!親に断り無しにお前はふざけた真似を!」




紫苑を横へ突き飛ばし、父親は私に手を挙げた。



「し…紫苑!!」



「沙奈、大丈夫だ。


これくらい、痛くもないから。


あまり、大きい声は出すな。


発作に繋がるから…」



私の父親から突き飛ばされたのに、私に降りかかった父親の手を片手で止めていた。



「触らないでくださいと言いましたよね?


騒ぎになってもいいんですよ?


私達は今、業務中ですし。



これは立派な営業妨害ですから。



それにこちらも、あなたを探す手間が省けました。



思った以上に、能力のない人間ですね?



本当は、沙奈の父親じゃないんじゃないですか?



この子は、すごく賢いのに。



こちらも、あなたを見つけたら警察に突き出すつもりでしたし。



地位も権力も何も無いあなたに、何が出来るんでしょうね?



多くの犯罪を犯して執行猶予が着いてたんじゃないんですか?



そんな期間に、警察沙汰になって一生外になんて出られませんよね?



あなたは、沙奈を刺してるんですから余計ですよ?


もちろん、こちらもあなたを逃がしたりはしませんが。」



「て、てめえ!」



紫苑とのやり取りをしている間に、大翔先生が少しでも私から父親を遠ざけるように車椅子を引いてくれた。



優しく、大翔先生は手を添えてくれた。



それから、気づいたら多くの人がこの部屋に集まっていた。




間もなく、父親は警察に拘束され私の目の前から消えていた。




目の前からいなくなった安心感から、全身の力が抜けていき、私は大翔先生に抱きしめられ意識を失っていた。
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