すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜
「沙奈、大丈夫だった?」
教室に戻ってから、奈子が私の表情を見ながら聞いてきた。
「うん、大丈夫だよ?」
「事件の日のこと、記憶を失うくらいのショックを受けたって聞いたから心配だったんだ…。
そんな、沙奈のことを考えるとさっき話しても良かったのかなって不安になってさ…」
そう言って、奈子は切ない表情で私の両手を取り俯いていた。
「そっか、奈子にはたくさん心配をかけちゃったよね。
ごめんね。
でもね、私は平気だよ。
まだ少し、父親のことについて触れられると動揺しちゃうけど…
それでも、いつまでも過去に振り回されてたら前へ進めない気がするの。
私も、こんな重い気持ちを抱えながら一生生きていくのは嫌なの。
だから、乗り越えられるように奈子にも手を借りることがあるかもしれない。
その時は助けてくれる?」
「当たり前だよ!
私達、親友以前に双子のようなものでもあるんだから。
あんな最低な父親だけど、沙奈と一緒の血縁があるって知って嬉しかったんだから。
それに、私も救われたの。
助け合うのはお互い様だし、沙奈が困ってたら助けるよ。」
「私も。
奈子が落ち込んでいたり辛い思いをしていたら真っ先に助けるから。
私に出来ることもあると思うから。
もう、無力なんかじゃない。」
双子同然の奈子がいてくれるなら、産まれてきて良かったとも思える。
大袈裟かもしれないけど、私に流れている半分の穢れた血液は奈子との繋がりがあるからそれほど嫌悪感に苛まれることもない。
奈子は、私の自慢の家族の1人。
「今日は久々にショッピングして美味しいもの食べて帰ろうよ。
美味しいフルーツサンドのお店見つけたの!
今度、沙奈と行きたいなって思って写真に保存しておいたんだ。」
「行こう!」
私と奈子は、残りの授業を終えてから駅前のフルーツサンドのお店へ向かった。
「沙奈は物欲ってあまりないよね。」
「えっ?」
フルーツサンドのお店に着いて、一息着いてから奈子は私にそう言った。
「もちろん、悪い意味じゃないよ。
何か、沙奈と一緒にお買い物に行くとあまり物を買わないなって思って。」
「奈子…。
こんなこと言ったら、私の事幻滅したりしない?」
「するわけないでしょう!」
「私ね、1人でお買い物っていうのができないの。
メモありのお買い物ならできるんだけど、好きなものを買ってきなって言われてショッピングに連れられる事が苦手で…。」
「どうして?」
「最初はこんなんじゃなかったの…
小さかった頃の記憶はまだ少し残ってるんだ…。
幼稚園や小学生の頃は、もちろんおもちゃとか可愛い文房具とかお洋服とか欲しいなって思う物はたくさんあった。
だけど、あの父親が買ってくれるわけもなく欲しいとも言えずに気持ちだけ心の中に閉まっていたの。
でもある時、突然特別欲しい物が無くなったの。」