祈る男と渇いた女
「わたしたち夫婦は、おまえを我が子のように思っている。おまえのしていることはとても崇高で素晴らしいことだし誇りにも思っている。だが寝る時間も削り、食べる時間も惜しんでボランティアをしているおまえは、自分の命を削っているようにしか思えない。このままだと過労で倒れてしまう。他にも多くの人がボランティアに来ているのだから、少しは周囲にまかせてはどうだい」
渇いた女は、黙って夫婦の言葉を聞いていましたが、話が終わるとすぐに返事をしました。
「ご心配をおかけしてすみません。でも毎日、目の前で多くの人が苦しみ、孤独に死んでいくのです。わたしはその死になにもできなくて悔しい。願わくば、もし切り離すことができるのならば、わたしは自分の目も口も手も足も、いや、体の全てを、命でさえも、苦しんでいる人達に分けてあげたい。目の前で苦しむ人、死に逝く人を、一人でも多く助けてあげたいのです。それがわたしの人生の使命だと思うのです」
パン屋の夫婦は渇いた女の決意があまりにも固かったので、それ以上言葉が続きませんでした。
その日から、ますます渇いた女は、火が付いたようにボランティアにのめりこんでいったのです。
血まみれの天使
渇いた女が、長年ボランティアを続けるうちに、いつのまにか女の周囲に、彼女を女神のように思う人々が集まり、女を支えるようになりました。
渇いた女は夜が明ける前から動き出し、深夜まで介護の現場とパン屋を行き来しました。
女が施設に泊まり込めば仲間も一緒に泊まりました。女が行くところに仲間もいつも一緒でした。渇いた女は休むことなくボランティアを精力的に続けました。仲間も彼女の崇高な使命と理想を実現するために、彼女を支え続けようとしたのです。渇いた女は仲間の好意にとても感謝していたので、自分のことなど後回しにして仲間の面倒もよくみました。
ところがある日のこと、仲間の一人が、
「家族が心配するので、ボランティアを辞めさせていただきます」
と言って渇いた女から離れていきました。
またある日、一人の仲間が、
「結婚するので、ボランティアを辞めます」
と言って渇いた女から離れていきました。
さらにまた一人、
「身も心も疲れ果てました」
と言い残して去ったのです。
こうして次々と、渇いた女の周囲から、仲間が去っていきました。
渇いた女は、黙って夫婦の言葉を聞いていましたが、話が終わるとすぐに返事をしました。
「ご心配をおかけしてすみません。でも毎日、目の前で多くの人が苦しみ、孤独に死んでいくのです。わたしはその死になにもできなくて悔しい。願わくば、もし切り離すことができるのならば、わたしは自分の目も口も手も足も、いや、体の全てを、命でさえも、苦しんでいる人達に分けてあげたい。目の前で苦しむ人、死に逝く人を、一人でも多く助けてあげたいのです。それがわたしの人生の使命だと思うのです」
パン屋の夫婦は渇いた女の決意があまりにも固かったので、それ以上言葉が続きませんでした。
その日から、ますます渇いた女は、火が付いたようにボランティアにのめりこんでいったのです。
血まみれの天使
渇いた女が、長年ボランティアを続けるうちに、いつのまにか女の周囲に、彼女を女神のように思う人々が集まり、女を支えるようになりました。
渇いた女は夜が明ける前から動き出し、深夜まで介護の現場とパン屋を行き来しました。
女が施設に泊まり込めば仲間も一緒に泊まりました。女が行くところに仲間もいつも一緒でした。渇いた女は休むことなくボランティアを精力的に続けました。仲間も彼女の崇高な使命と理想を実現するために、彼女を支え続けようとしたのです。渇いた女は仲間の好意にとても感謝していたので、自分のことなど後回しにして仲間の面倒もよくみました。
ところがある日のこと、仲間の一人が、
「家族が心配するので、ボランティアを辞めさせていただきます」
と言って渇いた女から離れていきました。
またある日、一人の仲間が、
「結婚するので、ボランティアを辞めます」
と言って渇いた女から離れていきました。
さらにまた一人、
「身も心も疲れ果てました」
と言い残して去ったのです。
こうして次々と、渇いた女の周囲から、仲間が去っていきました。