妖精姫ともふもふな妖精猫の王様~妖精の取り替え子と虐げられた王女は猫の王様と冒険がしたい~
 舞踏会場であった大広間が闇に包まれた頃、黒い影が月明りに照らされる。耳障りな男の声が低く大広間に響く。

「危ない危ない。もう少しで見つかるところだった。ケットシーは意外と鋭いな。エルファーレンで『取り替え姫』を殺めるのは難しそうだ。別の機会を狙うとしよう」

 矢はカテリアーナに向けて放たれたものだった。しかし、男はカテリアーナほど弓の名手ではない。一度目は外してしまった。続けて放とうとした時にカテリアーナが立ち上がり、狙うことができなかったのだ。さらに赤いドレスの貴婦人がカテリアーナを庇ったので、男は機会を待った。

 しかし、テーブルの下にカテリアーナが隠れてしまったため、機会は失われた。立ち去ろうとした時にフィンラスが男の影を見つけ追っ手を差し向けてきたのだ。

 だから男は追っ手の目を欺き、静かに戻った。元いた舞踏会場へ……。
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