妖精姫ともふもふな妖精猫の王様~妖精の取り替え子と虐げられた王女は猫の王様と冒険がしたい~
 黒の粒が入っている小瓶を手に取ると、カテリアーナは蓋を開けて鼻を近づける。刺激的な香りがしたかと思うと、鼻がむずむずとしてくしゃみが出た。

「クシュン! これは……クシュ! 何? クシュン!」

 くしゃみが止まらないカテリアーナの手からフィンラスが小瓶を取り上げる。

「これは胡椒だな。そうか。カティは肉や魚を食わないからな。知らなくとも無理はない」

 胡椒は肉料理や魚料理に合う香辛料だ。しかし、カテリアーナの主食は豆類や野菜だ。しかも素材そのものの味を好むカテリアーナは、ほとんど食事に味つけをしない。

「薬草としての胡椒なら知っているわよ。下痢や腹痛に効くの。でも胡椒の実は赤のはず。黒いのは初めて見たわ」

 やや鼻声のカテリアーナはドレスのポケットからハンカチを出す。くしゃみをしたせいで鼻水が出そうなのだ。鼻水を垂らすなど淑女としてはしたない。

「それは黒胡椒といいます。実が熟す前に収穫して長時間乾燥させると黒く変色するのですよ。主に食用でピリッと辛いですが、肉料理や魚料理に合います」
< 201 / 203 >

この作品をシェア

pagetop