妖精姫ともふもふな妖精猫の王様~妖精の取り替え子と虐げられた王女は猫の王様と冒険がしたい~
 花のティアラはカテリアーナに合わせて作られていた。つまり、アデライードに合わなかったのだ。癇癪を起したアデライードが壊したと考えるのが妥当だろう。

 実際、ドレスはアデライードに合わせて仕立て直された。軽くて美しいドレスをアデライードが気に入ったからだ。ネックレスなどの装飾品は誰でも身に着けられる。ただ、ティアラだけはアデライードの頭のサイズに合わなかったのだ。

 カテリアーナの心は暖かくなる。形は変わってしまったが、ノワールが贈ってくれたものを身につけられるのだ。

 やがて、侍女長がカテリアーナの髪に髪飾りを挿すと、部屋中に聞こえるように声を張る。

「お支度が整いました」


 玉座に座った国王にカテリアーナは頭を下げ、挨拶をする。

「今日まで育てていただきありがとうございました。これよりエルファーレン王国へ参ります」
「うむ。息災でな」
「はい。陛下もどうかお元気で」

 カテリアーナを送り出す家族は国王のみである。

 王太子クリフォードは国王名代としてアデライードの結婚式に参列するため、オルヴァーレン帝国へ行っている。王妃ラグネヴィアはカテリアーナを見送る気がないようだ。姿が見えない。


 ラストリア王宮から高らかなファンファーレとともに四頭立ての馬車が走り出す。付き従うのはラストリア王国騎士団第一師団のみだ。

 あまりにも寂しすぎる王女の輿入れであった。
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