妖精姫ともふもふな妖精猫の王様~妖精の取り替え子と虐げられた王女は猫の王様と冒険がしたい~
 捲し立てる息子を宥めるために、ストリングスはアイザックへ顔を向ける。アイザックは騎士としては一流なのだが、一本気な性格が玉に瑕だ。

「落ち着け。妖精は人間を食わない」

 ストリングスも実際にエルファーレンの国王の姿は知らない。

 人間でエルファーレン王国への入国を許されているのは、隣国オルヴァーレン帝国のカルヴァン商会のみだった。

 だが、三年前にラストリア王国のオーガスタ商会もエルファーレン王国への入国を許可されたのだ。

 オーガスタ商会の会頭ベアトリクスはストリングスの騎士学校時代の友人だった。今でも親交があるので、時々飲みに行ったりしている。

 ベアトリクスは剣の腕が恐ろしくたつ。男装して騎士になったことがばれなければ、王国騎士団長になっていたのは彼女だったかもしれない。

 男装がばれて騎士の位を剥奪(はくだつ)されたベアトリクスは、実家のオーガスタ商会を継いだ。彼女は商才もあったらしく、エルファーレン王国への入国許可まで取り付けた手腕は大したものだとストリングスは思う。
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