妖精姫ともふもふな妖精猫の王様~妖精の取り替え子と虐げられた王女は猫の王様と冒険がしたい~
 活発な王女は離宮の庭園にあった高い木に登ったり、鞍を着けていない馬に乗ったりと大変なお転婆姫だった。その度に祖母に叱られて頬を膨らませていたカテリアーナは、子供らしい子供だったのだ。
 
 だからこそ、十六歳になったカテリアーナを久しぶりに見た時、アイザックはあまりの美しさに思わず息をのんだ。人間離れしたその美しさは形容することができなかった。

「カテリアーナ姫をエルファーレン王国へ嫁がせると、会議で突然陛下が仰られた時は儂もお前と同じ気持ちだった」
「でしたら、なぜ殿下を引き留めなかったのですか? 父上」
「あのままラストリア王国にいてもカテリアーナ姫は不幸なだけだ」

 ストリングスは眉を顰める。ラストリア王宮でカテリアーナの味方は一人もいない。使用人ですら、不敬とも思わずカテリアーナを『取り替え姫』と呼び蔑む。

「エルファーレン王国は妖精の国です。妖精が人間である殿下を受け入れるとは思えません」
「いや。エルファーレンの国王は懐が深い人物と聞く」
「人ではなく妖精です。エルファーレンの国王は怪物のような姿という噂しか聞いておりません。殿下が食べられてしまったらどうするのですか?」
< 72 / 203 >

この作品をシェア

pagetop