王子と社長と元彼に迫られています!
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なんだか胸元が涼しい感じがして目が覚める。見ると何者かの手が私のブラウスのボタンを外していた。

「!?ちょ!?」

思わず声を出すと、『悪い、起こしちゃったか。』と低いイケボが返ってくる。暁さんだった。

「寝てるのに第一ボタンまで閉めてて苦しそうだなと思ったから・・・それに泣いたのか?涙の跡がある。」

そう言って人差し指で私の頬をなぞるように触れた。

「このブラウス、くるみボタンの一つ一つに違う刺繍が入ってるから一番上まで閉めて一直線に揃えたくなっちゃうんです・・・泣いたのは・・・その、自己管理できない自分が情けなくて。」

嘘をついてしまった。本当はあの写真を見て涙がこぼれてきてしまったのだった。そしてそのまま寝てしまったらしい。暁さんは『・・・そうか。』とだけ言った。私が嘘をついてごまかしているとわかった上で、涙の本当の理由を聞かないでいてくれているようだった。

「暁さんは何でここに?」

「昼休み、星谷紬が血相変えてちさを探してたんだ。朝の通勤の時体調が悪そうだったから心配で連絡したけど返信ないって。ちさが基本的にビル内で昼とってるって言ってたからってこのビルのカフェテリアとかベンチとか全部探したらしいぞ。あいつ午後はずっと外出らしくて急いで出てった。それで俺がちさのランチ仲間に聞きに行ったら医務室にいるって言われたから。」

紬くんが・・・?焦って私を探してくれている姿が目に浮かび、胸がざわめく。連絡してくれたみたいだけれど通知が来てなかったなと思いメッセージアプリを確認すると、たまたま紬くんのメッセージの後に複数の公式アカウントからのメッセージが届いていたので通知が重なってしまっていて気づくことができなかったようだ。紬くんとのトーク画面を開くと私の体調を心配するメッセージやスタンプが届いていた。
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