王子と社長と元彼に迫られています!
「・・・弁当の匂いがする。」

「ご、ごめんなさい。」

暁さんはふっと笑った。

「そろそろ昼飯食べろ。昼休みが終わってしまうからな。」

「暁さんはお昼は・・・?」

「この後外出するからその時に食べる。まだ時間あるからここにいてもいいか?」

「それはもちろん、どうぞ。」

ベンチに腰かけ、おにぎりを食べながらタッパーの中身───朝食の残りの玉子焼き、ベーコン、ブロッコリー───をつまむ。その私を暁さんは隣に座ってじっと見ていた。

「あの・・・食べるところじっと見られてると恥ずかしいんですが・・・。」

「そうだろうな、と思って見てる。」

「わざとやってるの!?もぉ、見ないでください。」

体を彼と逆の方向にひねるとわざわざ立ち上がって私が見えるところまで移動して視線を注いでくるので、もう一度逆の方向を向いてみると案の定そちらにやってきてまた私を見ている。

「そんなことやってると昼休み終わっちゃうぞ。諦めろ。何なら俺が口移しで食わせてやる。」

「何が『何なら』なんですか!?文脈めちゃくちゃですよ!?」

「・・・お前とこんな風な会話が出来なくなるなんて考えたくもないよ・・・。」

さっきまでいつもの調子でいじめてきていたのに、いきなりしゅんとされて戸惑う。固まってしまった私を見て暁さんは『ほら、早く食え。』と玉子焼きを小さなフォークで挿して口に入れてくれた。
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