王子と社長と元彼に迫られています!
「あ、暁さ・・・。」

「俺と星谷紬の気持ちに応えられないから、好きな元彼にも女がいるから、お前はここから去るのか?仕事もそんな風に決めてそれでいいのか?」

「涼華さんの会社の仕事や寮での生活、楽しそうって思ったのは本当です。それに私は散々お二人の間でフラフラして結局元彼のことが、なんて自分勝手過ぎてもう合わせる顔がないっていうか・・・。」

「そんなことはいい。俺も星谷紬と同じ気持ちだ。恋人になってくれなくてもいい。これからお前の笑顔が見られなくなるなんて、そんなの・・・。」

暁さんの声は震えていた。私の頬に優しく触れる。

「お前が今一番やりたい仕事が今の仕事でも俺の会社の仕事でもなく、あいつの会社での仕事だっていうなら俺だって応援する。お前の人生だからな・・・でも、そうでないなら・・・名古屋に行く件は考え直してもらえるとありがたい。お前が嫌がるならもう二度と話しかけない。遠くから見てるだけにするから。頼む・・・。」

暁さんの漆黒の瞳が潤んでいて今にも涙がこぼれそうだ。私は一日に二人の男性を泣かせてしまった。ハンカチを出そうとして紬くんに貸してしまったことを思い出す。それを知っている暁さんの涙を紬くんのハンカチで拭ってもいいものだろうか。

「人前で目を潤ませたのなんて初めてだ。お前にならどんな自分も見せられる。」

ついに涙がこぼれた。泣かせてしまったのは自分なのに、すごく美しい涙だと思ってしまった。考えた末、持参したおにぎりと小さなタッパーとデザートのみかんを包んでいる大判のハンカチをほどいてそれで彼の涙を拭った。
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