王子と社長と元彼に迫られています!
「明日はぼっちバースデーかぁ・・・Happy Birthday to meかぁ。」

泣くだけ泣いた翌日、土曜日の午後。畳んだ洗濯物をしまいながら部屋でひとり、ぼそっと呟く。目はすっかり腫れぼったくなってしまっていたけれど、ライブ配信で優悟と友野さんの姿を見てしまった時とは違い、すっきりした気分だった。

誕生日は毎年家族か友達か・・・彼氏か、なんだかんだ誰かと過ごしていたので、一人で過ごすのは初めてのことだ。

開き直って家族や友達に『祝って~。』なんて連絡するという手もなきにしもあらずだが、大人への第一歩として一人で過ごすのもアリかも、なんて思った。ちょっと寂しい気もするが、『ぼっち』ではなく『ソロ』バースデーと言えばちょっとおしゃれな響きがする。

───髪の毛でも切りに行って・・・あ、トリートメント、いつもよりいいのにしちゃおう。それから新しい服を買って・・・青山とか代官山のセレクトショップとか行っちゃおうかな・・・夜は・・・あ、バーに行ってみるのはどうだろう。行ったことないし。一人でバーなんていかにもオトナじゃん?あーでも、入りやすいところがいいな。女性マスターのお店とか。『マスター、聞いてよぉ。』みたいな。あれ?それともスナックに行くべき?『ママ、聞いてよぉ。』って・・・スナックならカラオケがありそうだから歌ってスッキリ出来そうでそれもいいかも。とりあえずお店調べてみよ。なんだかわくわくしてきたかも。

「!痛ったぁ・・・。」

最後の洗濯物をしまい、はりきって勢いよく引き出しを閉めたら思いっきり指を挟んでしまって『くうぅ・・。』となっているところでインターホンが鳴った。

───ネットでなんか買ってたっけな?注文した化粧品はこないだ届いたし、親が何か送ってくれたのかな?

指にフーフー息を吹きかけながら(これって何か意味あるんだろうか?)、インターホンのモニターを見に行く。そこに映った人物を見て、痛みはすっかり吹き飛んだ。
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