王子と社長と元彼に迫られています!
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『ちゃぷん』とお湯が跳ねる音がする。露天風呂の温度は熱過ぎずぬる過ぎずちょうどいいし、火照った顔が冷たい外気に当たって心地よく、いつまででも入っていられそうだ。

夜の暗闇の中ライトアップされた浴槽の中で暗くて見えない海の波の音を聞きながら、私は余韻に浸っていた。

白状してしまうと、私は優悟とも学生時代に付き合っていた彼氏とも体を重ねても頂上まで上り詰めたことはなかった。今思うと大体いつも6合目か、いっても7合目で引き返して来てしまっていてそれで満足していたし、こんなもんだろうと思っていた。

なのに・・・私は先程あっという間に頂上まで上りつめてしまった。今までに見たことがなかった景色をついに知ってしまったのだ。

乱れることは恥ずかしいことだと思っていて、そんな自分を彼氏に見せたり自分で見たくなかった。ずっと自分を解放できていなかったのだ。しかしその殻を破って外に出た時、私が包まれたのは夢を見ているみたいな快感と大好きな人と深く繋がれたことによる幸福感だった。

───それにしてもここ、浴槽の周りもライトアップされてるけど、浴槽の中、特に下の方が明るくてなんか恥ずかしいな・・・。

思わず体育座りになり体を隠しているとそんな私に気づいた優悟が意地悪く言ってくる。

「何小さくなってるんだよ。家の狭い湯船と違ってせっかくこんなに広いんだから、俺みたいに手足ばーんって広げてみたら?」

向かい合って湯船に浸かる彼は堂々と体を晒している。何度も見たことあるはずなのに直視できず、目を逸らしてしまうと、お湯が揺れてこちらに近づいてくる。優悟の手により私の手は左右に開かれて、彼の足により私の足も開かれた。

「や・・・!何するの?」

「こうした方が気持ちいいから。」

「確かに気持ちはいいけど・・・。」

「あと、俺が千咲の綺麗な体と恥ずかしがってる可愛い姿が見たいから。」

「!?もう・・・。」

「千咲、好きだよ。千咲の自分でも知らないような本当の姿、もっと解放して俺に見せて?俺も本当の俺を見せるから。本当の俺は千咲といる時にしか現れないし、自分でも知らない自分だから驚くんだよ。」

優悟がリラックスした表情から切なげな顔に変わり、それに伴って私の鼓動も速く、強くなった。
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