王子と社長と元彼に迫られています!
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帰宅し、改めて昨日のことを思い出す。優悟に後ろから抱きしめられたまま眠り、朝になり目が覚めた時彼は『夢見ないで寝れた。ぐっすり眠れたよ。幸せな睡眠だった。』と言っていた。

クローゼットの上の棚に置いた紙袋から、優悟にもらったアクセサリー類を入れてある箱を取り出す。

その中に沖縄旅行に行った時にペアで作ったネックレスがあった。3cmくらいの長さの試験管のような器に沖縄の離島でとれた星の砂や貝殻の欠片、小さなイルカのオブジェなど、好きなアイテムを選んで入れられるもので、オプションでそれぞれのイニシャルも掘ってもらった。私達もこんないかにもカップルっぽいことしてたんだな、と今更思い出す。

前の職場で働いていた頃に行ったこの旅行は本当は3泊したかったけれど私の仕事の都合で2泊が限界だった。3日連続の休みをとる為にその直前は連日会社に泊まり込み、旅行前日は徹夜して会社から待ち合わせ場所の羽田空港に向かった。その為旅行中はずっと体調がいまいちで食事もあまり食べられなかったし、写真には青白い顔でおさまっている。

しかも最悪なことに最終日の朝会社から電話がかかってきて、午後から出勤するように言われた。上司のミスをカバーする為だ。ミスをした本人は10日間の海外旅行に出かけていた。

優悟に理由を話すと彼は怒りもせず困った顔すら見せずに、すぐにチェックアウトの準備を始めた。私本人でさえその状況を飲み込めないでいたというのに。

結局その日行く予定だったパラセーリングをキャンセルし、飛行機の便を変更して東京に戻り私はそのまま会社に直行したのだった。

優悟は主体的に動くこともなかったけれど、とにかく何でも受け入れてくれる人で、文句を言ったりすることがなかった。待ち合わせ時間や食事や買い物もいつも私のペースに合わせてくれていた。自分のペースで事を進めるのはベッドの上くらいで、そこは彼に主導してほしいと思っていたので有り難かった。

今の派遣の仕事に転職し慣れてきたところで、私はそんな優悟に別れを告げ、そして彼は今回も何も言わずに受け入れてくれたのだった。
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