受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される
「なんだ……」

 その時、レーヴは胸に何かが直撃したような衝撃を受けたような気がした。

「なんだ、なんだ、なんだ! 私ってば、デュークが好きなんじゃない!」

 唐突に導き出された答えは、レーヴの中にすとんと落ちた。
 それはまるで、失っていたものが戻ってきたような不思議な感覚。

 レーヴは知らなかった。
 こんな気持ちがあることを、彼女は知らなかった。

「やわらかくて、あったかくて、ひだまりみたいな……そんな気持ちもあるのね」

 身を焦がすような情熱的な恋をする人からすれば、レーヴが自覚したばかりの気持ちなんておままごとみたいなものかもしれない。
 けれど、レーヴにとってこの気持ちは、恋以外の何物でもなかった。

「うっわぁ……私って鈍かったのね」

 改めて恋愛に向いていないなと自覚しながら、レーヴがため息を吐いたその時だった。

「ちょっと、あなた!」

 独りごちるレーヴにかけられたのは、小生意気な女性の声。
 高慢さが滲むその声に、レーヴは聞き覚えがあった。

 違うよね、とレーヴは淡い期待を抱きながら振り返る。
 振り返った先にいた人物に、レーヴは目を眇めた。
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