嘘と愛
「そっか。でもどうするの? これから」
「そろそろ、決着をつける時だって思っている。もう、終わりにする為にね」
「そうだね、もう終わらせないといけないよな…」
窓の外の景色を見ながら少し遠い目をしている大雅。
その頃。
楓は仕事を終えて駅前の事務所に戻ってきた。
事務所のビルの前に来ると、ピピッと携帯が鳴った。
カバンから携帯電話を取り出して、着信表示を見ると知らない番号だった。
何となくその表示番号から、楓は何かを感じているようだ。
「…はい…」
電話にでた楓はちょっとだけ息を呑んだ。
(…やっと繋がったのね…イリュージュ…)
電話の相手はディアナだった。
(着信拒否なんて、面白い事してくれたのね。やっと新しい電話を入手できたから、かけてみたんだけど。繋がって良かったわ)
「…どこにいるの? 今…」
声を潜めて楓が尋ねると、ディアナはクスっと笑た。
(居場所を聞き出して、警察に通報する気? )
「いいえ、そんなことしないわ」
(え? なぁに? 私と手を組む気? 元犯罪者として? )
「そうじゃない。…もうやめましょう、こんな事。…姉さんの狙いは、アレでしょう? 」
フッと鼻で笑うディアナ。
(なによ、分かっているんじゃない。22年前から、私が狙っている本当の物が何か)
「…そうね。…」
(あんたが釈放されて良かったわ。そのおかげで、あんたの母親が受け継いだ財産も合わせてもらえるんだもの)
ディアナは不敵に笑いだした。
(渡してくれるわよね? 全てのお金を)
「…お金を手にして、どうするつもり? 」
(決まっているわよ。新しくやり直すの。別人になってね。捕まるなんて、バカじゃない? 人が人を裁くなんて、ありえないでしょう? 22年よ? 警察もバカだから。あんな目撃情報だけであんたを逮捕しちゃうし。あんたはあっさり認めて、刑を受けるし。でも結局、釈放されて。まぁ、そのおかげであんたに多額な財産が受け継がれてきたから。私には好都合なんだけどね)
「そう…。じゃあ、お金を手にしたら姉さんは幸せになれるの? 」
(そうよ。お金さえあれば、世の中のたいていの人は言いなりよ。男だって、選びたい方だよ)
「そうなのね。…そこまで言うなら、全部あげるわ姉さんに」
ん? と、ディアナは黙ってしまった。