嘘と愛

「このクローゼットの中に、ちょっとだけ着替えが用意してあるから使ってね。洗面用具や、化粧品もここにあるから使ってね。これは、電気のリモコンよ」

 天井からの電気はリモコンで消せるようになっている。
 ドアもノブではなく、掛けになっていて。
 手が不自由な零でも簡単に開くようになっている。
 
 なんとなく…零を待っていたかのような部屋に見える。

「鞄、ここにかけておくわね」

 空は壁に零の鞄をかけた。
 
「お仕事疲れたでしょう? これ、着替え。使ってね」

 袋から服を取り出して、空がベッドの上に置いてくれた。


 部屋着で、ラフなワンピース。
 かぶりになっていて、袖口はゴムになっている。
 可愛いデザインのイエロー系で、零に良く似合う色である。

「着替えがお終わったら、下に降りてきてね。夕飯で来ているから」
「…はい…」

 空が出ていき、零は着替えのワンピースを手に取った。
 新しい物で素材もよくて、高そうな感じがする。

「これは…あの椿に買ったものかもしれない…」

 そう呟いた零だが、素直に着替えることにした。


 着替えが終わって、零は階段で下へ降りて行った。
 階段には手摺がついていて、滑らないように滑り止めもついている。


 

 リビングの食卓には、夕飯が用意されている。
 美味しそうな和食で焼き魚。


 食卓には、幸喜と空と幸喜の父の夏樹がいる。
 夏樹は幸喜にそっくりで、一緒にいると兄弟のように見える。


 3人を見ていると、零の胸がキュンとなった。


「あ、零ちゃん。どうぞ、こっちに来て」

 空が零に気づいて、傍に来てくれた。

 幸喜と似ている所があるが、とても魅力的で見ていると胸がキュンとなる零に夏樹はちょっと見惚れていた。

 零はちょっと遠慮がちに、空の隣の席に座った。

「初めまして、幸喜の父の夏樹です」

 優しい口調で自己紹介をしてくれた夏樹に、零はそっと頭を下げた。

「初めまして、水原零と申します…」
「零ちゃん。可愛い名前だね。遠慮しなくていいから、我が家だと思ってゆっくりしてね」
「有難うございます」

 食卓には1人ずつ食事が用意されている。
 
 零の場所には滑らないように、滑り止めが敷いてあり、右手だけでも食べやすいように全て置いてあった。


「遠慮しないで食べてね」


 ご飯をついでくれて、空が言った。


「頂きます…」

 手を合わせて、少しずつ食べ始める零。

 とても美味しくて、暖かい料理になんとなくほっとさせられた零。
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