エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
扱いにひと手間かかり壊れやすくもある折り畳み傘は、高学年になってからという決まりが学校にあるらしい。

自分のことには無頓着な矢城だが、美緒の学校生活に必要な物品に関しては、いつの間にか情報を入手していて、適切な時期に買ってあげている。
詩織は感心していた。

(矢城先生のそういうところも、好き……)

美緒を見送ってから、詩織はドアの取っ手や明り取りの小窓、表札を磨き上げる。
それをしながら、ホッとした思いが胸に込み上げた。

(赤沼さんと美緒ちゃんに許してもらえてよかった……)

なんの許しかというと、矢城との交際についてである。

矢城との初夜は、ひと月ほど前のことになる。
その翌日は恒例の、住人全員での夕食会だった。

赤沼と美緒を傷つけたくない詩織は、矢城との交際をどう伝えようか、それとも隠していた方がいいだろうかと悩んでいたのだが……矢城になんてことない口調で言われてしまったのだ。

『あ、そうだ。俺と詩織ちゃん付き合うことになったから』

その日のメニューは焼肉だった。
カルビを落とした美緒が、立ち上がって詩織に怒りをぶつけてきた。

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