エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
なにかを思い出した様子の彼女は、バッグの中をゴソゴソと探り、名刺サイズのチケットのようなものを出して詩織にくれた。

「これは……あっ」

なんですかと尋ねる前に理解して、詩織は赤面する。

ナワポンの勤め先の名称と、二十パーセントオフという文字が書かれていた。
つまり、ラブホテルの割引券だ。
堂々と渡されるものではなく、詩織は思わず背中に隠した。

けれども斜め後ろには机に向かう矢城がいて、詩織が隠したそれを抜き取った。

「先生、それは……!」

慌てる詩織に構わず、矢城がサラッと口にしてしまう。
「ラブホテルのクーポンか。ナワポンさん、もしかして夜の声が漏れてた?」

ナワポンが笑う。
「ちょっとだけだよ。私がトイレに起きたら、廊下で聞こえた。大丈夫。美緒ちゃんは夜中、トイレに行かないから」

二階のトイレとお風呂は共同だ。
押さえきれなかった詩織の喘ぎ声が、階段から二階の廊下へ響いていたとは、気づかなかった。

(恥ずかしい……。あっ、ということは?)

詩織は恐る恐る振り向いて、赤沼を見た。
矢城の寝室の真上は赤沼の部屋。
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