マリアちゃんと鬼ごっこ
なにが起きたんだろう? 緊急という言葉に神経を尖らせる。
『殺人鬼が脱走したため、この町をただちに封鎖します。平岡中学校二年B組の生徒以外の人たちは速やかに隣町へと避難してください』
……え、は?
そんな放送に、クラスメイトたちが顔を見合せていた。
殺人鬼が脱走? 町を封鎖? 二年B組の生徒以外?
放送の意味が理解できなくて、すぐに動ける人は誰もいなかった。わけのわからない放送はそのあとも繰り返されて、またキーンというハウリングとともに終わった。
「はは、なんだよ、これ。誰かのイタズラ?」
緊迫した空気を変えようと明るい声を出したのは凛太郎だった。それに続くようにみんなも喋りはじめる。
「殺人鬼って、まさか噂のマリアちゃんのこと?」
「町を封鎖だってさ。そんなことできるわけないのにまじウケる!」
派手な一軍の人たちが色めきだつように笑っていた。
「永人……これ本当にイタズラなのかな」
そんな中で、三花が不安そうにぽつりと呟く。俺は明るくすることも深刻になることもできずに、ただ呆然と放送が流れていた外を見つめていた。
……やけに静かだ。
雲が分厚く覆っている空には鳥一匹飛んでいない。