サヨナラ、セカイ。
「俺はまず自分と闘わないとね。この脚が動くことを信じてリハビリに臨むよ。まずはそこからだ」

決意を秘めたナオさんの言葉を、わたしは大事に胸の中に仕舞い込んでいく。

「結果がどうでも受け容れて納得する。退院するとき今度こそ、沙喜にプロポーズする。今はこれが絶対に守れる約束。・・・俺の精一杯」

微笑みと一緒に力強く握り返された手。
目頭が熱くなったのをぐっと堪え、わたしは半泣き笑いの顔で。

「じゃあそれまでに、できる奥さんになる修行しなくちゃ」

「そんなことしなくても沙喜は満点の奥さんになるよ」

ここに来て初めて、二人で晴れた笑顔を零し合った。

ナオさんは打撲の痛みもだいぶ引いたらしく、胸を撫で下ろしながら口をついて出る安堵。

「でも階段から落ちるなんてビックリしたわ。生きててくれてほんとによかった」

「ついうっかりね。よそ見してた俺が悪いんだ」

さらっと出てきた答えを、どこか最初から用意されてたように感じたのは気のせい・・・?

「ただの事故で入院費も保険が下りるし、自分の荷物は必要なものだけ三ツ谷に預かってもらってる。沙喜はなにも心配しなくて大丈夫だよ。・・・母さんにはまだ言えてないんだけどね、もう少ししたら三ツ谷から連絡してもらうつもりだから」

ナオさんはわたしが一番知りたがるだろうことを自分から明かした。他に訊くことがなくなったくらい完璧な答えだった。
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