サヨナラ、セカイ。
嘘は言われてない。もし隠されてることがあるんだとしても、当人が言う以上のことを追及するつもりもない。小さく笑ってさらりと流す。

「わたしにできることは何でもするから言ってね」

「会いに来てくれるだけで元気になるよ。・・・あ、ドライシャンプーの買い置きが欲しいかな。沙喜にあんまりみっともない俺を見せたくないし」

甘い顔。

本当は辛いはずなのに。自分はどうなるんだって不安も、どうして俺がって憤りだってあるはずなのに。芯の折れない強い人。心から尊敬できる人。あなたの言葉は無条件で信じる。・・・それだけだから。

「次に会う時は髭くらい剃っておかなくちゃなぁ」

顎をなぞって悪戯気味に笑うナオさん。

できるなら毎日でも通いたい。でもこの病院は自分のマンションからそれなりに遠い。・・・引っ越す?でも、いずれ退院したら一緒に暮らすための家と車も必要。物件探しならそれこそ本分。郁子さんにも相談してみよう。

お腹の底が引き締まった。どんなセカイでもこの人と生きていく。実感が湧き上がっていた。
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