都合のいい女になるはずが溺愛されてます
バレないようにサプライズできりゃいいけど。
仁奈の驚いた顔見たさに頑張ってみようかなとか思う。

にしても、誰かといて幸せを感じる日が来るなんて。
人生何が起こるか分かんねーな。

だって仁奈に惚れたのは完全に予想外だったから。

女っ気もない、愛想もない地味な総務。
仕事はできるけど話しかけても表情ひとつも変えずに変に冷静で、第一印象は失礼ながら「こいつないな」だった。
若いのに愛嬌も新鮮味もない。それなのになぜか会社の役員たちに気に入られてるのがぶっちゃけ気に食わなかった。

で、好奇心混じりの興味で近づいたらしてやられた。
だってまさかあんなギャップの塊だと思わねーじゃん?

一緒にいるにつれて居心地がよくて情が湧いた。
この情ってのが厄介で、一度自覚してしまうともう離れられない。


「いい加減白状してください。何を企んでるんですか」

「え?いろいろ思い出してただけだって」


これまでのこと、ふと振り返ったら仁奈に疑いの目を向けられていた。
目を細めて睨むその表情もかわいい。
仏頂面ですら愛しいなんて、俺も相当仁奈のこと好きだと実感する。

ま、こんな人生も悪くはないな。
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