都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「は〜、幸せ」


なんとかカニにありつけて思わずにっこり。
ビュッフェ形式だからいくらカニを食べても怒られない、なんて幸せなんだろう。


「温泉でカニじゃなくてごめんね?」

「ん?いいですよ、今日お腹いっぱい食べて帰るので」


謝ってきたけど私は全然気にしてない。
確かに箱根でカニを食べる旅行は変更になった。
なんでも、佐久間はどうしても貸切風呂がいいらしく、その条件でカニを食べられる旅館がなかったから。


「箱根で陸と年越しできるだけで楽しみ」

「……煽ってる?」

「は?いい加減慣れてください」


名前を呼んだら色っぽい表情で見つめてきた。
しかし今の私は食欲全開なので全然なびかない。


「連れないこと言うじゃん、今まで素直でかわいかったのに」

「念願のカニを食べ尽くしたいのでそれどころじゃないんです」

「なるほど、色気より食い気ね」


ふっと鼻で笑われたけどその通りだから腹は立たない。
でも、私が食べているのをじっと見てくるからちょっと気が散る。
「なんですか?」と首を傾げたら、佐久間の口角が上がった。
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