都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「いやぁしかし、あの佐久間くんが結婚とはねえ」


朝から職場でこんな会話を聞いて最悪な気分になった。
会話の中心にいたのがセクハラ常習犯の上司だったから。


「しかも相手が遠藤さんって聞いてびっくりしたよ」

「いやぁ、それは僕も驚きました」

「佐久間くんも趣味悪いって言っちゃ悪いけど……ねえ」

「確かに佐久間くんならもっと美人を狙えたと思います」

「分かんないよ、案外彼女床上手だったりして」


そのセクハラ発言の後に「ギャハハ」と汚い笑い声が聞こえた。
だんだん声は遠ざかっていったけど、私はその場を動けなかった。

ショックを受けたんじゃなくて、なんで汚らしいおっさんに馬鹿にされなきゃならないの?と腹が立ったから。

このご時世、今の発言を録音して人事部に提出したら一発でクビになるはずだけど、それじゃ私の気が済まない

普通こんな馬鹿にされたら落ち込むはずに、私の中の何かがメラメラと燃え出した。

だったら本気出してやろうじゃない、と。
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