都合のいい女になるはずが溺愛されてます
映画を見てる仁奈の横顔が、いろんな光に照らされて見え方が変わる。
それが花火みたいな儚さでグッとくる。

……このことを仁奈に言ったら趣味悪いって思われそうだから絶対言わないけど。


仁奈が観たがってた2時間の映画は意外にも早く終わって、シアタールームが明るくなる。


「おもしろかったね」

「おもしろかったです!でもハラハラドキドキでお腹空いた」

「疲れたんじゃなくてお腹空いたの?」

「頭使ってお腹空きました。
……陸、夜ご飯食べて帰らない?」


あえて名前で呼んでタメ口。さすがに何回かやられたから魂胆は見えてる。


「仁奈、そうやって提案したら俺が絶対否定しないと思ってんだろ」

「……あは、バレた」


バレバレだからな、と言おうとしたら今度は俺の笑い方を真似してきた。

あー、もう……かわいすぎてキレそう。
なんなの仁奈、俺の弱点お見通しってワケ?


「……どした?」

「柄にもないキャラ演じて恥ずかしくなりました……」


かと思えば顔を真っ赤にして恥ずかしがる。
いや、こういう計算じゃ出せないかわいさが一番効くからやめて欲しいんだけど。

はぁ、やっぱり仁奈は今日もずるくてかわいい。




fin
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