都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「金曜、課長と飲み行くんだって?」


午後、給湯室でお茶を入れていたら後ろから佐久間の声がした。
外回り行くんじゃなかったっけ?こんなところで油売ってる場合じゃないでしょ。


「やっぱり聞いてたんですね」

「ねえ、課長はやめときなって。既婚者のくせしていい噂聞かないから」


心配のつもり?
ねえ佐久間、その優しさで女は勘違いするんだよ。
そこのところ、分かって言ってんの?


「……それを佐久間さんが言います?」

「課長、遠藤さんみたいな何でも言うこと聞いてくれそうな子が好きなんだって」

「ご忠告ありがとうございます。お生憎様、何でも言うことを聞くタイプじゃないので行くか行かないかは私で決めます」


たっぷり皮肉を込めて言い放ったら佐久間は「かわいくねー」と吐き捨てて給湯室の前から姿を消した。

別にいいよ、かわいいと思われなくて。お前と関わって心身ともにボロボロになるよりよっぽどマシ。

改めてあんなクズに体を許したことを後悔した。
あいつに関する記憶、そっくりそのまま消してなかったことにできたらいいのに。
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