都合のいい女になるはずが溺愛されてます
課長と約束した金曜日、体調がすこぶる悪かった。
佐久間に腹が立ってやけ酒した月曜日からどうも具合が悪い。

完全に風邪をこじらせてしまったので、その日はマスクをして過ごしていた。


「なんでマスク?でっかいニキビできた?」

「……」

「無視はやめろって」


そうとは知らず廊下ですれ違った佐久間はからかってきた。
そのニヤけたツラ、ほんと腹立つ。


「なんかあった?」


こういう時だけ妙に勘がいいのか、私の顔を覗き込んできた。
意識してるなんて思われたくなくて、佐久間の後ろに見かけた営業一課の課長に話しかけた。


「課長、今お話いいですか」

「……遠藤さん?ああ、いいよ」


課長、と呼んだ途端に佐久間は無表情になった。
なんで私を睨むの?意味わかんない。

課長が出てきた会議室の前まで小走りして佐久間と距離をとる。
振り返ったらもう佐久間はそこにいなかった。


「あの、今日のことなんですけど……」

「あー、ごめん。予定が入ったから今日は無理だ」


まだ言い切ってないのに課長はめんどくさそうな顔をした。
あれ、この顔どっかで……ああ、ビンタされた後に出くわした佐久間と同じ反応だ。


「……ああ、そうなんですね」

「今それどころじゃなくてさ、当日にごめんね」

「いえ、体調が優れないので直帰しようと思ってました」

「そう、お大事に」


何かあったんだろうな、少しイラつきながら会話を終了された。
とにかくよかった。迷惑かけない形で今日の食事お断りできて。
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