惡ガキノ蕾
~H.31.3.23 塚本と隆一~
九時を回ってカウンタ―に並んだ顔触れは、入り口からだんご、力也、太一、一樹、優、双葉の六人。毎度お馴染みの気のおけない面子が揃っていた。
一樹の横では優が、グラスを拭いたり灰皿を替えたりと、店が違えばキャバ嬢顔負けのサ―ビスで甲斐甲斐しく世話を焼いている。やってる本人は嬉しそうだし、双葉も放置してるから、これにはあたしもノ―タッチ。ま、春だしね。
その隣、太一と力也の今晩の肴はだんご。先《さっき》から凜を餌に二人掛かりでああだこうだと茶化しては、からかい騒いでいる。弄られてる方のだんごは、見てる此方が恥ずかしくなる位デレデレしちゃって、凜から直で話を聞いてるあたしとしては、ちょっと胸が苦しくなる程のにやけっぷり。ま、本人が幸せならそれでいいか。という事で、此方も触れない。返すゞ浮き世の春だしね。
──カラ・コロ・カラン
「いらっしゃい…」引き戸を開けたのは……?塚本!?…と、確か…隆一とかいう二人連れ。突っ立ったまま、なかゝ店の中に入って来ない二人に違和感を感じたカウンタ―で、頭が六つ振り返る。並んだ顔の中に一樹を見付けて、塚本が視線を止めたのが分かった。
優に目配せして、双葉が席を立つ。太一と力也も殆ど同時に席を立って、待ち受け画面の中の凜に夢中なだんごの頭を太一が叩いた。
一樹以外の四人と、不満気な優が、グラスを片手に座敷の奥に席を移す。
「どうぞ」とあたしは、カウンタ―の上を手早く片付けて、一樹の横に二つ席を作った。
「何のみますか」
少し間を置いて、塚本が口にしたのは「日本酒二つ」
「お一人で二つですか?」と、嫌みの一つでも言ってあげた方が良かったんだろうけど、ちょっと意地悪をしたくなって、あたしは口をつぐんだ。
枡《ます》の中にコップを据えて、注いだ酒が溢れて枡を満たす手前で止める。端《はな》から御代《おだい》なんて貰う気も無いし、燗か冷やかも聞かなかった。
塚本がコップの中身を一息で空にする。隆一はなんとか半分ってとこ。二人共こんだけ不味そうに酒飲む人、店始めてから見た事無いって位の飲みっぷり。
酒が廻るのを待たないで、下を向いた塚本が話し始めた。
「あ…、お…俺達明日、警察に行く事にした」
聞こえてはいるんだろうけど、一樹はその隣で相槌を打つ訳でもなく、無表情に煙草を咥える。拍子を合わせたきむ爺が煙管《キセル》に火を入れた。ゆっくりと顔を上げた塚本の眼があたしの顔で止まった。
「お前の事は巻き込んで悪いと思ってる。ごめん」
ごめんの処で、隆一も一緒になって頭を下げる。なんて答えたらいいのか分からないあたしは、塚本と隆一に向けてひとりゝ眼を合わせると、ただ黙って頷いた。
塚本は少し長めに息を吐くと、枡に残った酒を噛み付くように呷《あお》って枡を置いた。裏返しに置かれた枡を見て、一樹が煙草に火を点ける。
一度目を瞑った塚本の肩が大きく持ち上がって、「一樹!…俺はな、昔っからお前の事が大っ嫌いなんだよ!ぶっ飛ばしてやるから表に出ろ!」と、一樹の方に向き直って叫ぶ。突拍子もなく大きな声。これにも、当の一樹はピクリとも動かない。…あ、ちょっとだけ笑ったような気もしたんだけど、これはあたしの見間違いかも知れない。
少しだけ間を置いてダボシャツの胸の釦《ボタン》を一つ外し、灰皿に煙草を押し付けると、天井を見上げて大きく煙を吐き出す。それから──
「おもしれえ。表出ろ」
席を立った一樹に続いて、塚本と隆一が店を出て行く。座敷から成り行きを見守っていた太一達も、みんなしてグラスを片手に後を追って出て行った。あたしもきむ爺に声掛けてカウンターを出る。店の外に出ると、お月様の下にはどの位前からそうしていたのか、みゆの店に来ていた塚本の仲間が勢揃いしていた。
皆が見守る中、駐車場の真ん中に二メ―トル程の距離を置いて、一樹と塚本が立っている。何時の間に席を立ったのか、太一達の横にはビ―ル持参のお年寄り夫婦の姿が在った。
外灯の明かりが月と協力して、一樹と塚本の足元から影を伸ばしている。大きく息を吸い込んで、塚本の影が動き出した。「うぉぉらっ!」唸り声を揚げて向かって行った塚本が右の拳を振り上げる。一樹は腰を屈めて塚本のパンチをかわすと、一歩踏み込むと同時にその躰を抱き抱《かか》え、持ち上げた。地面を離れ逆さまになった塚本の躰が、束の間動きを止める。一切の躊躇なく地面に叩きつける、一樹のボディスラム。子供の頃からパパと一緒に見てた?見せられてたプロレス番組のお陰で、あたしにも技の名前は分かる。だから駐車場は土と砂利が半分ゝで、リングとは違うのも当然分かる。その証拠に地面に全体重を勢いそのまま打ち付けた塚本は、辛うじて動いちゃいるだけで、立ち上がれない。…ううん。立ち上がる処か、骨が折れるか、気を失っていても不思議は無いんだろう、きっと。痛みにもがく塚本に背を向けて、一樹が店の入り口に向かって戻って行く。唖然として、声も無く立ち尽くす塚本の仲間達。その横を抜けていく時も、一樹はそいつらと目を合わせようともしなかった。
「…どこ…行くんだよ…」よろけて震えながら立ち上がり、それでも一樹の背中に罅《ひび》割れた声を投げつける塚本。足の運びを止めた一樹が振り返った。何とか立ち上がったものの、未だ足許の覚束ない塚本に向かって「フッ」と短く息を吐いて走り出す。──跳んだ。……渾身のドロップキック。空中で地面と平行になった一樹の両足が、塚本の肩口を蹴りつけて突き放す。転がりながら躰を弾ませて、三メ―トル以上も吹っ飛んだ塚本は、駐車場の隅に立つ櫻の幹に、頭と背中を派手に打ち付けた。固く鈍い音が、あたし達の居る場所まで届く。見ていられなくなって、思わず顔を背けてしまう。鼻先に流れて来た煙の薫りで、何時の間にか隣に立っているきむ爺に気が付いた。なんでだろう?心なしかその横顔は機嫌が良さそうだった。「おう、気の早ええのがいやがんな」きむ爺の視線に誘われて見上げた先、逸《はや》って少しだけ開いた数輪の櫻が、塚本が打つかった衝撃に揺れている。「塚本!」隆一の声が静まり返った町内に響く。『塚本!立てよ!立ってくれよ!塚本!』仲間達が泣きそうな声を揚げる。その声が届いたのか、届いたのは別の物なのか、土に塗《まみ》れた塚本の頭が微かに動いた。櫻の幹に躰を預けて立ち上がろうとしているのか、膝を立てようとしている。その時、あたしが居る場所から見えた塚本の顔が、笑った。…一瞬だけど、確かに笑ったんだ。動きを止めてその様子を見ていた一樹が、塚本に向かってゆっくりと歩き始める。一樹が近付くよりもよりもほんの少しだけ早く立ち上がった塚本が、ふらつきながらも、下から右の拳を突き上げた。「ゴッ」と短く、骨と骨が打つかり合う音がして、一樹の頭が後ろに弾ける。「うおおぉ―っ!」塚本の仲間と、何故か太一達からも大きな歓声が揚がる。双葉まで…。両手を上げて興奮するお年寄り夫婦。──次の瞬間。殴られた一樹の方が踏み止《とど》まって殴った勢いで体勢の崩れている塚本の後頭部に向けて、投げ出すように大きく右腕を振った。「パァッ―ンッ」と、破裂音にも似た音が周囲に響く。首が伸びたみたいに見える程の、手加減無しのラリアットだった。でんぐり返しをするみたいに、頭から一回転して大の字になる塚本。手足の動きからはもう、意思の力が感じられない。全員が息をするのも忘れた数秒の間、其処には砂埃だけが蠢《うごめ》く、或種《あるしゅ》、幻想的な世界が在った。今度はもう、立ち上がれと声を掛ける者は居ない。不似合いな程清々しい静けさの中、太一がポツリと「死んだんじゃねえだろうな」なんて、縁起でも無い事を言い出した。慌てて駆け寄る隆一達。
塚本の周りに出来た輪から離れて、一樹が煙草に火を点ける。遠く離れた場所から一部始終を見ていた欠けた月は、分け隔て無く、この場に居る全員を均等に照らしていた。一樹の煙草が一本灰になる頃、隆一の肩を借りて塚本がゆっくりと立ち上がった。仲間達に支えられながらも、自分の足で歩き始める。誰も口を開かない。月も櫻も黙したまま、只そこに在った。そのまま駐車場を出て行こうとする塚本。通りに出る寸前で、軽い調子で投げた一樹の言葉を受けて、その背中が止まる。
「また遊びに来いよ」
半分だけ振り向いた塚本の横顔がくしゃっと崩れた。
「…ゆっくり咲きゃあいい」
隣で聞こえたきむ爺の呟きを、煙が暈《ぼか》して、夜に溶かしていく。
見上げれば、黒には短い薄墨の天幕に、針で刺した程の小さな星達。月の光を彩るには未だ頼り無い莟《つぼみ》達が、咲いて誇れる日を待っていた。
終幕
九時を回ってカウンタ―に並んだ顔触れは、入り口からだんご、力也、太一、一樹、優、双葉の六人。毎度お馴染みの気のおけない面子が揃っていた。
一樹の横では優が、グラスを拭いたり灰皿を替えたりと、店が違えばキャバ嬢顔負けのサ―ビスで甲斐甲斐しく世話を焼いている。やってる本人は嬉しそうだし、双葉も放置してるから、これにはあたしもノ―タッチ。ま、春だしね。
その隣、太一と力也の今晩の肴はだんご。先《さっき》から凜を餌に二人掛かりでああだこうだと茶化しては、からかい騒いでいる。弄られてる方のだんごは、見てる此方が恥ずかしくなる位デレデレしちゃって、凜から直で話を聞いてるあたしとしては、ちょっと胸が苦しくなる程のにやけっぷり。ま、本人が幸せならそれでいいか。という事で、此方も触れない。返すゞ浮き世の春だしね。
──カラ・コロ・カラン
「いらっしゃい…」引き戸を開けたのは……?塚本!?…と、確か…隆一とかいう二人連れ。突っ立ったまま、なかゝ店の中に入って来ない二人に違和感を感じたカウンタ―で、頭が六つ振り返る。並んだ顔の中に一樹を見付けて、塚本が視線を止めたのが分かった。
優に目配せして、双葉が席を立つ。太一と力也も殆ど同時に席を立って、待ち受け画面の中の凜に夢中なだんごの頭を太一が叩いた。
一樹以外の四人と、不満気な優が、グラスを片手に座敷の奥に席を移す。
「どうぞ」とあたしは、カウンタ―の上を手早く片付けて、一樹の横に二つ席を作った。
「何のみますか」
少し間を置いて、塚本が口にしたのは「日本酒二つ」
「お一人で二つですか?」と、嫌みの一つでも言ってあげた方が良かったんだろうけど、ちょっと意地悪をしたくなって、あたしは口をつぐんだ。
枡《ます》の中にコップを据えて、注いだ酒が溢れて枡を満たす手前で止める。端《はな》から御代《おだい》なんて貰う気も無いし、燗か冷やかも聞かなかった。
塚本がコップの中身を一息で空にする。隆一はなんとか半分ってとこ。二人共こんだけ不味そうに酒飲む人、店始めてから見た事無いって位の飲みっぷり。
酒が廻るのを待たないで、下を向いた塚本が話し始めた。
「あ…、お…俺達明日、警察に行く事にした」
聞こえてはいるんだろうけど、一樹はその隣で相槌を打つ訳でもなく、無表情に煙草を咥える。拍子を合わせたきむ爺が煙管《キセル》に火を入れた。ゆっくりと顔を上げた塚本の眼があたしの顔で止まった。
「お前の事は巻き込んで悪いと思ってる。ごめん」
ごめんの処で、隆一も一緒になって頭を下げる。なんて答えたらいいのか分からないあたしは、塚本と隆一に向けてひとりゝ眼を合わせると、ただ黙って頷いた。
塚本は少し長めに息を吐くと、枡に残った酒を噛み付くように呷《あお》って枡を置いた。裏返しに置かれた枡を見て、一樹が煙草に火を点ける。
一度目を瞑った塚本の肩が大きく持ち上がって、「一樹!…俺はな、昔っからお前の事が大っ嫌いなんだよ!ぶっ飛ばしてやるから表に出ろ!」と、一樹の方に向き直って叫ぶ。突拍子もなく大きな声。これにも、当の一樹はピクリとも動かない。…あ、ちょっとだけ笑ったような気もしたんだけど、これはあたしの見間違いかも知れない。
少しだけ間を置いてダボシャツの胸の釦《ボタン》を一つ外し、灰皿に煙草を押し付けると、天井を見上げて大きく煙を吐き出す。それから──
「おもしれえ。表出ろ」
席を立った一樹に続いて、塚本と隆一が店を出て行く。座敷から成り行きを見守っていた太一達も、みんなしてグラスを片手に後を追って出て行った。あたしもきむ爺に声掛けてカウンターを出る。店の外に出ると、お月様の下にはどの位前からそうしていたのか、みゆの店に来ていた塚本の仲間が勢揃いしていた。
皆が見守る中、駐車場の真ん中に二メ―トル程の距離を置いて、一樹と塚本が立っている。何時の間に席を立ったのか、太一達の横にはビ―ル持参のお年寄り夫婦の姿が在った。
外灯の明かりが月と協力して、一樹と塚本の足元から影を伸ばしている。大きく息を吸い込んで、塚本の影が動き出した。「うぉぉらっ!」唸り声を揚げて向かって行った塚本が右の拳を振り上げる。一樹は腰を屈めて塚本のパンチをかわすと、一歩踏み込むと同時にその躰を抱き抱《かか》え、持ち上げた。地面を離れ逆さまになった塚本の躰が、束の間動きを止める。一切の躊躇なく地面に叩きつける、一樹のボディスラム。子供の頃からパパと一緒に見てた?見せられてたプロレス番組のお陰で、あたしにも技の名前は分かる。だから駐車場は土と砂利が半分ゝで、リングとは違うのも当然分かる。その証拠に地面に全体重を勢いそのまま打ち付けた塚本は、辛うじて動いちゃいるだけで、立ち上がれない。…ううん。立ち上がる処か、骨が折れるか、気を失っていても不思議は無いんだろう、きっと。痛みにもがく塚本に背を向けて、一樹が店の入り口に向かって戻って行く。唖然として、声も無く立ち尽くす塚本の仲間達。その横を抜けていく時も、一樹はそいつらと目を合わせようともしなかった。
「…どこ…行くんだよ…」よろけて震えながら立ち上がり、それでも一樹の背中に罅《ひび》割れた声を投げつける塚本。足の運びを止めた一樹が振り返った。何とか立ち上がったものの、未だ足許の覚束ない塚本に向かって「フッ」と短く息を吐いて走り出す。──跳んだ。……渾身のドロップキック。空中で地面と平行になった一樹の両足が、塚本の肩口を蹴りつけて突き放す。転がりながら躰を弾ませて、三メ―トル以上も吹っ飛んだ塚本は、駐車場の隅に立つ櫻の幹に、頭と背中を派手に打ち付けた。固く鈍い音が、あたし達の居る場所まで届く。見ていられなくなって、思わず顔を背けてしまう。鼻先に流れて来た煙の薫りで、何時の間にか隣に立っているきむ爺に気が付いた。なんでだろう?心なしかその横顔は機嫌が良さそうだった。「おう、気の早ええのがいやがんな」きむ爺の視線に誘われて見上げた先、逸《はや》って少しだけ開いた数輪の櫻が、塚本が打つかった衝撃に揺れている。「塚本!」隆一の声が静まり返った町内に響く。『塚本!立てよ!立ってくれよ!塚本!』仲間達が泣きそうな声を揚げる。その声が届いたのか、届いたのは別の物なのか、土に塗《まみ》れた塚本の頭が微かに動いた。櫻の幹に躰を預けて立ち上がろうとしているのか、膝を立てようとしている。その時、あたしが居る場所から見えた塚本の顔が、笑った。…一瞬だけど、確かに笑ったんだ。動きを止めてその様子を見ていた一樹が、塚本に向かってゆっくりと歩き始める。一樹が近付くよりもよりもほんの少しだけ早く立ち上がった塚本が、ふらつきながらも、下から右の拳を突き上げた。「ゴッ」と短く、骨と骨が打つかり合う音がして、一樹の頭が後ろに弾ける。「うおおぉ―っ!」塚本の仲間と、何故か太一達からも大きな歓声が揚がる。双葉まで…。両手を上げて興奮するお年寄り夫婦。──次の瞬間。殴られた一樹の方が踏み止《とど》まって殴った勢いで体勢の崩れている塚本の後頭部に向けて、投げ出すように大きく右腕を振った。「パァッ―ンッ」と、破裂音にも似た音が周囲に響く。首が伸びたみたいに見える程の、手加減無しのラリアットだった。でんぐり返しをするみたいに、頭から一回転して大の字になる塚本。手足の動きからはもう、意思の力が感じられない。全員が息をするのも忘れた数秒の間、其処には砂埃だけが蠢《うごめ》く、或種《あるしゅ》、幻想的な世界が在った。今度はもう、立ち上がれと声を掛ける者は居ない。不似合いな程清々しい静けさの中、太一がポツリと「死んだんじゃねえだろうな」なんて、縁起でも無い事を言い出した。慌てて駆け寄る隆一達。
塚本の周りに出来た輪から離れて、一樹が煙草に火を点ける。遠く離れた場所から一部始終を見ていた欠けた月は、分け隔て無く、この場に居る全員を均等に照らしていた。一樹の煙草が一本灰になる頃、隆一の肩を借りて塚本がゆっくりと立ち上がった。仲間達に支えられながらも、自分の足で歩き始める。誰も口を開かない。月も櫻も黙したまま、只そこに在った。そのまま駐車場を出て行こうとする塚本。通りに出る寸前で、軽い調子で投げた一樹の言葉を受けて、その背中が止まる。
「また遊びに来いよ」
半分だけ振り向いた塚本の横顔がくしゃっと崩れた。
「…ゆっくり咲きゃあいい」
隣で聞こえたきむ爺の呟きを、煙が暈《ぼか》して、夜に溶かしていく。
見上げれば、黒には短い薄墨の天幕に、針で刺した程の小さな星達。月の光を彩るには未だ頼り無い莟《つぼみ》達が、咲いて誇れる日を待っていた。
終幕
