「あんたじゃない、とは言ってないからね」
「もう、あんたと逢うの、やめる」

 始まりがあるものには終わりがある。だからいつか、こんな日が来ると思っていた。
 息を吸って、ゆっくりと吐き出す。手元で、くっきりと浮き上がる二本目の線を数秒見つめて、トイレの水を流した。
 箱、透明なフィルム、説明書、使用済みの本体。それらを茶色い安っぽい紙袋に詰め込んで、リビングのゴミ箱に捨てた。ソファに置きっぱなしだった携帯を取って、操作する。目的の番号を出して通話マークをタップすれば、呼び出し音が鼓膜を震わせた。
 通話口に出た人に用件を告げ、了承の返事をもらってから、通話を終了させる。小さくため息をつき、テレビの横に置いてあるカレンダーへと視線を移す。
 明日は、火曜日。でも、朝一で診てもらいたい。これといった理由はないけれど、白黒つけるならなるべく早い方がいい。再び携帯へと視線を落として、操作する。

「……ここら辺に……あったっけ」

 検索窓に【産婦人科】の文字を入力した。
< 1 / 16 >

この作品をシェア

pagetop