今さら本物の聖女といわれてももう遅い!妹に全てを奪われたので、隣国で自由に生きます
ミレーヌは、両親の愛だけではなく聖女という私の役柄まで奪ってしまった。

やがて私が聖女の務めを果たすようになると、私の後にミレーヌも必ず続けてそれをやった。

聖女の役割とはすなわち国の国防である。

聖女の魔力は凄まじいもので、それを利用して国境に結界を貼るのである。

湖に行って体を清め、魔力を流しこむ。そして結界を貼り終えると、それをなぞるように妹もそれをやった。

聖女は生涯結婚が許されない。だから、ミレーヌは王太子との婚約が許されなかった。代わりに、私が王太子との婚約をすることになった。私が八歳の時の話だ。だけど体裁上聖女だと知られたから王家と婚約を結ぶのでは体裁も何もあったものではない。なので、私と王太子との婚約は生まれながらのものだとして発表された。

両親はミレーヌのことが愛しいあまり、嫁にだしたくなかってのかもしれない。だけど、ここで誤算が生じた。ミレーヌが王太子のことを好きになってしまったのである。

そして王太子もまたミレーヌに惚れた。私はといえば王太子といても息が詰まって緊張してばかりだった。どこで公爵の手のものが見ているかわからない。側仕えとしてつけられた侍女に何を密告されるかわかったものでは無い。

私は王太子といても最低限の返事しかできず、結果彼に飽きられた。

王太子とミレーヌの恋は火花を散らすように早く燃え上がっていった。そしてついに、ミレーヌが両親におねだりしたのだ。王太子と婚約したい、と。両親はミレーヌの頼みに一も二もなく了承した。そして、王太子にそれを打診した。王太子はその時点で私との婚約解消、そしてミレーヌとの婚約を了承したが、しかしそれの国王陛下が待ったをかけた。

一度、私と王太子は話し合った方がいい、と告げて。
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