約束
3
やっぱり、
なのか。
どうして、
なのか。
裏切る時は必ずくる。
普通にカノジョがいて、マジメに会社で仕事しているだけだったのに。
出張に出た。
積極的な妹タイプの後輩と一緒だった。
性格がハッキリしていて美人だと言われているが、オレの好みではない。
親しそうに話は出来るというだけの後輩。
なのに帰社したらもう噂になっていた。
出張先で別に何もなかった。
本当に、驚くほど全く何もなかった。
何なら一度も視界にすら入ってないぐらいだった。
頭の中では胡桃のことを考えていたし、ごく普通に、商談して、食事して、部屋でもちろん1人で寝て、起きて、仕事して、帰ってきた。
だのに、なぜか目の前の女が彼女面している。周りもそんな目で見ている。
それでも祐一は、まだ普通に親しげにその後輩と話をしていた。
やたらと後輩が2人きりの状態にもっていくから、そのまま2人で、全く内容も覚えてないどうでもいい話をしていた。
デスクで。
廊下で。
会議室で。
帰る時、勝手に寄ってきたので駅まで歩いていた。
それだけだ。
ビルから出る時、胡桃の顔が見えたように思った。
傷ついて、泣きそうな表情⋯⋯ 。
胡桃を避けただけで、別れてないから祐一の彼女は胡桃だ。
そのまま、フッと雑踏の中に消えた。
心が痛かった。
後輩に唐突に言った。人生で初めて。
「オレ、カノジョいるから」
立ち止まりもせず後輩と別れ、あっさり帰宅した。
翌日、祐一は後輩と一晩過ごした事になっていた。
(なんで、こんな事になるんだ? )
とボンヤリ思った。
(駅で分かれたよな? )
後輩に気を持たせるような事、少しでもしただろうか?
何もやった覚えもないし、なんで本人もまるで勘違いしているのか分からない。
現にカノジョがいるとはっきり言ったのに。
なぜ周りがそんな目で見ているのかもわからない。
そんな自分なんだろう、と思った。
結局、父の血を引く、浮気男。
こんな事ばかりが起きるような、素質なんだろう。
父親と同じなんだ。
あー、そして、今まで、なんの否定も身を守る事もしてこなかった自分だ。
胡桃と付き合ってるほうが自分らしくなかったんだ。
「意外ですね、遠野さんがそんな事いうなんて、変ですよ」
「⋯⋯ 」
「そんな事関係なく、食事ぐらいいいんじゃないですか? 」
今までなら、そうだった。
胡桃の顔、泣き顔がチラつく。
それを振り払う。
自分らしくない。
最初から言ってるし、知ってる。
自分はそんな人間じゃない。
胡桃を必ずや裏切って傷つける。
オレはそんな人間なはずだ
金曜日に後輩と2人きりの食事を『約束』した。
でも、『約束』じゃない、普通にしているだけだから。
そして胡桃をさけた。
胡桃は知ってるはずだ。
でも嫌だとか何も言ってこなかった。
避けてるオレにも、何も言わない。
ごく普通に、淡々と接してきた。
祐一はまだ胡桃に何も言っていない。
ただ、彼女はひどく顔色が悪いように思う。
面白くなかった。
避けたのはこっちで、他の女と出かけるのも自分なのに。
もう十分付き合ったから、いつもなら新しい子が出てきてバイバイなんだろうか。
でも、そんなことしたって、胡桃の顔しか浮かばないのに。
彼女のことしか考えてないのに。
だから決定的に別れてない。
いつだってきちんと別れるとか、いちいちそんな事もしてこなかった。最初からちゃんと付き合ってる訳じゃなかったし、どうでもよかった。
でも今回、もし胡桃と別れてしまったら⋯⋯ それは本当に別れだから、別れたくないんだ。
やっぱり、
なのか。
どうして、
なのか。
裏切る時は必ずくる。
普通にカノジョがいて、マジメに会社で仕事しているだけだったのに。
出張に出た。
積極的な妹タイプの後輩と一緒だった。
性格がハッキリしていて美人だと言われているが、オレの好みではない。
親しそうに話は出来るというだけの後輩。
なのに帰社したらもう噂になっていた。
出張先で別に何もなかった。
本当に、驚くほど全く何もなかった。
何なら一度も視界にすら入ってないぐらいだった。
頭の中では胡桃のことを考えていたし、ごく普通に、商談して、食事して、部屋でもちろん1人で寝て、起きて、仕事して、帰ってきた。
だのに、なぜか目の前の女が彼女面している。周りもそんな目で見ている。
それでも祐一は、まだ普通に親しげにその後輩と話をしていた。
やたらと後輩が2人きりの状態にもっていくから、そのまま2人で、全く内容も覚えてないどうでもいい話をしていた。
デスクで。
廊下で。
会議室で。
帰る時、勝手に寄ってきたので駅まで歩いていた。
それだけだ。
ビルから出る時、胡桃の顔が見えたように思った。
傷ついて、泣きそうな表情⋯⋯ 。
胡桃を避けただけで、別れてないから祐一の彼女は胡桃だ。
そのまま、フッと雑踏の中に消えた。
心が痛かった。
後輩に唐突に言った。人生で初めて。
「オレ、カノジョいるから」
立ち止まりもせず後輩と別れ、あっさり帰宅した。
翌日、祐一は後輩と一晩過ごした事になっていた。
(なんで、こんな事になるんだ? )
とボンヤリ思った。
(駅で分かれたよな? )
後輩に気を持たせるような事、少しでもしただろうか?
何もやった覚えもないし、なんで本人もまるで勘違いしているのか分からない。
現にカノジョがいるとはっきり言ったのに。
なぜ周りがそんな目で見ているのかもわからない。
そんな自分なんだろう、と思った。
結局、父の血を引く、浮気男。
こんな事ばかりが起きるような、素質なんだろう。
父親と同じなんだ。
あー、そして、今まで、なんの否定も身を守る事もしてこなかった自分だ。
胡桃と付き合ってるほうが自分らしくなかったんだ。
「意外ですね、遠野さんがそんな事いうなんて、変ですよ」
「⋯⋯ 」
「そんな事関係なく、食事ぐらいいいんじゃないですか? 」
今までなら、そうだった。
胡桃の顔、泣き顔がチラつく。
それを振り払う。
自分らしくない。
最初から言ってるし、知ってる。
自分はそんな人間じゃない。
胡桃を必ずや裏切って傷つける。
オレはそんな人間なはずだ
金曜日に後輩と2人きりの食事を『約束』した。
でも、『約束』じゃない、普通にしているだけだから。
そして胡桃をさけた。
胡桃は知ってるはずだ。
でも嫌だとか何も言ってこなかった。
避けてるオレにも、何も言わない。
ごく普通に、淡々と接してきた。
祐一はまだ胡桃に何も言っていない。
ただ、彼女はひどく顔色が悪いように思う。
面白くなかった。
避けたのはこっちで、他の女と出かけるのも自分なのに。
もう十分付き合ったから、いつもなら新しい子が出てきてバイバイなんだろうか。
でも、そんなことしたって、胡桃の顔しか浮かばないのに。
彼女のことしか考えてないのに。
だから決定的に別れてない。
いつだってきちんと別れるとか、いちいちそんな事もしてこなかった。最初からちゃんと付き合ってる訳じゃなかったし、どうでもよかった。
でも今回、もし胡桃と別れてしまったら⋯⋯ それは本当に別れだから、別れたくないんだ。