潔癖女子の憂鬱~隣人は、だらしない男でした~
「燃えるゴミの日って言ってるじゃないですかっ」
「きちんと燃えるゴミの袋に入れてるだろーが!」

も、燃えるゴミの袋に入れればいいと思ってんの? 馬鹿じゃないの?!

「空き缶は、資源物です。きちんと、この地域のゴミの出し方見てます?」
「たまたま紛れただけだし、それに800度以上の焼却炉で焼くんだから溶けるだろ」
「たまたま? 先週も入ってましたけど? それに、多分、あなた私より年上ですよね?ルールも守れないんですか」

男の長い前髪の隙間から鋭い眼光がのぞく。

「……」

こんなので怯んでいたらダメだと「あの……、聞こえてますか?」と、声をかける。

「は? 聞こえてるって!」

凄みのある声を発したと思ったら、距離を詰めてきた。

ーーな、なに? なんなの?

ゴクリと唾を飲み込んだ舞は、ピリピリした空気感に耐えきれなくなり「わ、わたしがやるのでいいです」とゴミ袋を奪いマンションのエントランスに向って走り出した。
チラチラと後ろを振り返り、男がついて来てないのを確認してから部屋にに入った。
鍵を締めた舞は、はぁはぁ…と息をつく。背中にじっとりと汗をかいていた。

とにかく怖かった。

前髪で顔もよく見えなかったし、背も高いし身体も大きかった。
どこの階の住人なんだろうか。
普段メガネをかけていないが、相手には舞の顔をバッチリ見られている。
よくよく見たら同一人物だとわかるだろう。
自分は、あの男の顔見えなかったのに。

「はぁ……。ムカつく」

手に持ったゴミ袋を見つめ、ゴミ収集車は8時半に来るから仕事前に一緒に出すしかないな、とため息を吐いた。
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