潔癖女子の憂鬱~隣人は、だらしない男でした~
「私、賃貸じゃなくてマンション買ったんですよ? ここ買った時、一つもそんな話なかったじゃないですか。もし、毎日騒音に悩まされることになったり、ゴミの分別も出来ない人が住んでるって知っていたら購入しなかったです」
『マンションを購入して住んでる人なので、そんな変な人いないと思うんですけどねぇ……』

は? いるって伝えたのに、なにも調べもせずに答えるなんて最悪だ。
やっぱり写真を見て抱いた第一印象の通りなのかもしれない。
ぐっ、と怒りを堪えて続ける。

「あの……、私が嘘をついてるとでも言うんですか?」
『そんなことないんですけど。でも、神経質になりすぎなんじゃないですかぁ?』

し、神経質??
今、この人、私のことを否定した?
電話口の言葉の端々に、少し小馬鹿にしたような笑いを含んでる気がして不快感が募っていく。

「藤代さんは、私の申告を疑ってませんか? 本当なら調べますって言うのが普通なんじゃないんですか?」

電話口の藤代は、答えに窮しているのか、なにも言ってこない。
「あのー……」
『私は501号室の方とお会いしたことがあるのですが、礼儀正しい男性でしたよ。だから、そんなことないはずなんですよ』

そうきたか。
きっと、めんどくさいことに首を突っ込みたくないのだろう。

「それは、外面かもしれないですよね? 私だって、初対面の外面は良くします。じゃあ、マンションの壁が薄いんですか? でも、503号室の生活音は聞こえないんです。501だけなんですよ?それは、どう説明するんですか?」
『…………』

畳みかけるように伝えた舞の言葉に、藤代は押し黙ってしまう。
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