潔癖女子の憂鬱~隣人は、だらしない男でした~
「私は、何も引越し代金とか、慰謝料払えって言ってるわけではないんです。ただ、管理会社の方から注意してもらえませんか?って言ってるんです」
『……注意でいいんですか?』

損害賠償でも請求されるかと思っていたのか、明らかに藤代の声から安堵の表情が読み取れた。
本来ならもっといい条件の物件を用意して!って言いたいぐらいだが、引っ越しの手間を考えると自分があの無礼な住人に負けた気がして、舞のプライドが許さない。

「注意していただくだけでいいです。それで、生活態度を改めるかもしれませんし。それに、大人なんですから注意されたことは受け止めて改善してくれないと困ります」
『わかりました。こちらから501号室の住民には連絡しておきます』

「はい。すみませんが早急におねがいします。では、失礼します」

電話を切った舞は、深く長い息を吐いてを椅子の背もたれに体重をかけ天を仰いだ。

なにが、礼儀正しい男性よ。
礼儀正しいなら、夜中に大きな音を出すはずないじゃない。
それに、外面がよくても、中身が伴わないとただの詐欺師だし。
完璧な男って、三枝部長みたいな人を言うんだけど。
っていうか、三枝部長が隣なら静かに暮らせていて、こんな気苦労をせずにすんだと思う。
でも、里崎さんが隣なら賑やかだったかもしれない。
それでも、今のような不快感は沸き上がらないだろう。

とりあえず、管理会社の言質は勝ち取った。
安心したら、ぐぅ〜、と大きな音を立て舞のお腹が鳴った。

「あっ、お昼やすみ……」

時計を確認すると、すでに12時42分を過ぎていた。

「しかたがない、デスクの引き出しに入ってるカロリーバーでも食べて空腹を凌ごう」

舞は、深く座っていた椅子から立ち上がり、会議室のドアを開けた。
< 24 / 62 >

この作品をシェア

pagetop