潔癖女子の憂鬱~隣人は、だらしない男でした~
ドアの近くの椅子に座り、スマホのアドレス帳を確認する。
昨夜のうちに、管理会社の電話番号は登録済だ。
ディスプレイに出てきた名前をタップして電話をかける。

『お電話ありがとございまいます。スマートハウスプランです』
「すみません、あの……。セレナイト・ヒルズの502の結城ですが、このマンションの担当者の方をお願いしたいのですが、いらっしゃいますか?」

どんな会社が管理しているのか、と気になってネットで会社情報は確認していた。
誰が自分のマンション担当なんだろうと、ホームページに載っていた社員の名前と顔写真を思い描く。
優雅な保留音を聴きながら、チャラそうな藤代さんとか、三笠さん、あと女の人で大人しそうな宮間さんとかは嫌だなと思っていると、保留音が止んだ。

「はい、担当の藤代です」

えぇー、あの茶髪のチャラい男が担当?と、目の前が真っ暗になる。
この人に伝えて、改善するものなんだろうか。
いきなり上司を出して欲しいと伝えても、ただのクレーマーだと思われるかもしれない。
どうしようと悩み、言葉を発せずにいると。

『……お客さま?』

「あ、すみません。502号室に2週間前から住んでいる結城です。隣の部屋の住人の騒音に悩まされていて、よく眠れないんです。それに、どこの部屋の人かわかりませんが、ゴミの分別もきちんとしないし、どうなってるんですか?」

至極冷静に淡々と告げる。

『えっと、隣はたしか……』
「501号室です」

『おかしいな……』

なにが、おかしいというのだろうか。
現に、舞は騒音に悩まされていて寝不足になっている。
その反応の方がおかしい。
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