潔癖女子の憂鬱~隣人は、だらしない男でした~


部屋のドアを閉め、そのままもたれ掛かった舞は、俯きながら小さく息を吐いた。
まさか、こんな展開になると思ってなかった。

譲と名乗った隣の男は、仕事が出来る男らしく、舞が戸惑っている間にルールを決めらた。

掃除は、日曜日の14時から17時までの3時間。
ベッドルームだけは、入らないで欲しいこと。
それ以外は、満足いくまで自由に掃除していいこと。
そして、その3時間は舞の部屋のソファーで譲が寝ることーー

これが最後まで舞が嫌だ、と拒否していた案件だった。
男の人を部屋にあげたことがない。
いい年をしてそんな免疫もないのか、と笑われてまうかもしれないが、事実だからしかたがない。
それを伝えてみたけれど、隣のいけすかないアイツは「大丈夫、だっててそそられないし」と、言った。

いや、言いやがった!

側にあった鏡に映る自分を横目で確認する。
キッチリと一本に纏めた黒髪、化粧っ気のない顔、白いシャツ、黒いパンツ、黒縁メガネーー女らしさとは無縁な容姿。

「そりゃぁ、そうかもしれないけど……」

舞と、社内で美人と評判の吉川を並べたら、10人中10人が吉川になびくだろう。
まぁ、もしかしたら1人くらいは舞のことがいいと言う奇特な男もいるかもしれないが。
そう思っても、面と向かって言われると多少なりとも傷つくわけで。

ーーん?

頭によぎった言葉に、大きくかぶりを振る。

「私は、課長みたいな人がタイプなんだから、譲って人になんて思われても関係ないし。それより、計画書作らなきゃ」

玄関の様子から考えるに、きっと他の部屋はもっと最悪だろう。しかも、水回りが心配だった。
効率よく片付けるために計画表を作っていた方がいい。
それに、こういう効率良く仕事を進めるためのタスク表を作るのは好きだ。そして、タスクをクリアしていくのがやりがいもあって、充実感が味わえる。
そうと決まったら来週の日曜日までにしなくてはいけない。

「よし、まずウチの掃除用具の在庫からチェックしよう」

ポケットに入れていたスマホを起動し、掃除用具や洗剤をしまっている納戸まで足早に向かった。
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