潔癖女子の憂鬱~隣人は、だらしない男でした~
◆家政婦家業も楽じゃない
「たぶん、これだけあればとりあえずいいよね……?」

玄関に並べた掃除用具を眺めつつ、ため息を吐いた。
先週、廊下のところしか見えなかったけれど、かなり散らかっていて、どのくらい汚れやゴミが蓄積されているのかわからなかった。
でも、1日で到底終わるレベルではないのはわかる。
だからこの1週間、どこから掃除をしていくべきか、舞は念入りに計画をした。
エプロンのポケット仕舞っていたメモを取り出す。

「今日は、とりあえずお風呂とトイレと廊下」

隣の部屋だから間取りがわかってありがたい。
自分の部屋で何度もシミュレーションが出来たから、脳内イメージは完璧だ。
ポケットにメモを戻し、譲が訪ねてくるまでお茶でも飲んでようと思い踵を返した途端、チャイムが鳴る。

腕時計を見ると、ジャスト14時。

「うわ、すごい。ちゃんと来たんだ」

生活態度も服装も髪型も無頓着でルーズだから、30分くらいの遅刻は許容範囲内だった。
むしろ、正直オンタイムでやってくるとは思っていなかった。

「はーい」と、返事をした舞はドアを開ける。

ーーあっ、格好はだらしない。当たり前か。

グレーのスウェットに、無精ひげ。前髪も目の下まで伸びて、足には茶色いサンダル。
茶色いビニール製のサンダルなんて、高校の時にいった林間学校の宿泊施設の共同トイレでしか見たことない。
むしろ、どこに売ってるのかが不思議なくらい。
約束の時間通りに来たから期待してみたものの、1週間で人が変わるはず無いか、と内心ため息をこぼす。

「入ってください。あっ! ちょっと……」

サンダルに目を奪われていたけれど、他人の家に初めて来てこれはないだろう。
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