潔癖女子の憂鬱~隣人は、だらしない男でした~
「靴下はどうしたんですか?」
「靴下?」

「そうです。なんで裸足」

譲は、視線を自分の足下に落とし「なんか問題でも?」と、さも当たり前かのように言った。
びっくりした舞は、目を見開いて一瞬固まってしまう。

問題でも、ですって? 問題なら大ありだ。

自分の部屋を顧みて欲しい。
そんな部屋からやってきた住人の足の裏の皮膚を廊下に擦り付けることに疑問を抱かないのだろうか。

「とりあえず、俺は眠い。上がるぞ」
招き入れてもいないのに、譲は廊下を歩き当たり前のようにリビングのドアを開けた。
同じ間取りだからとはいえ、自分の家のように振る舞う譲に体の奥から怒りがこみ上げてくる。

「ここ借りるな」と、譲はソファーに横になった。

「ちょっと、待って」
「あ、そっか。悪い」

ようやく舞の気持ちをわかってくれたか、と思い譲の次の言葉を待つ。
ズボンのポケットに手を入れた譲は、「ほらっ」と拳を突き出してきた。

「なんですか?」
「手、出せ」

怪訝な顔をしながら恐る恐る譲の顔の前に右手を差し出した。

「こうだって」と、言われながら手のひらを上に向けられ、そのまま譲は握っていた拳を舞の手のひらの上で緩めた。

「鍵ないと部屋に入れないだろ?」

それはそうだけど。もっと違う言葉があるんじゃないの? と、舞は片眉を寄せる。
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