潔癖女子の憂鬱~隣人は、だらしない男でした~
舞の理想を具現化したような人が、実はこの部署にいる。
三澤商事・営業二課の三枝課長。舞の直属の上司だ。

仕事が出来るのは当たり前だが、なによりシャツも糊付けがきちんとされ、スーツにしわひとつ無い。
それに、髪の毛も後ろに流して整髪料で固めていて、乱れたところを見たことが無いのだ。
きっちりかっちりが大好物の舞にとって、三枝は理想の上司であり、見た目も理想そのものだった。

――今日もやっぱりかっこいい。

「ちょっと、結城ちゃん俺の話聞いてる?」
「聞いてます。里崎さんには、感謝してますよ。でも、それとこれとは別なので」

可愛げのない言い方になってしまったな、と眉尻を下げ里崎を見ると、シュンッと肩を落としている。目もウルウルさせて、まるでチワワみたいだ。

――また、やっちゃった。

モテないのはこういうところなんだな、と反省する。
眉尻を下げ、舞は申し訳なさそうに切り出す。

「……でも私、里崎さんのこと頼りにしてますので」

これは本当だ。
こうやって少し強く言いすぎるのをさりげなくフォローしてくれて、他の社員との潤滑剤になってくれている。
さっきまで切なそうな顔をしていた里崎が、「うん。めいいっぱい頼っていいからね!」と、満面の笑みを浮かべた。
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