潔癖女子の憂鬱~隣人は、だらしない男でした~
長い前髪で目が隠れ、ボサボサ頭で無精髭にグレーの上下のスウェット。
足元は、裸足にサンダルだ。
猫背なのも相まっていかにもだらしなそうな男が持っているゴミ袋の中身を凝視した舞は、「あっ!」と声を上げた。

ゴミ袋から透けて見えるビールの空き缶。
先週の月曜日に見たゴミ袋の中身と一緒の銘柄だ。

思いのほか声が響いてしまい俯いて咄嗟に口を押さえる。

恐る恐る顔をあげると、男が舞の方を向いていた。
しまった。どんな人が持ってきて、本当に中身が燃えるゴミじゃないか知りたかっただけなのに。
舞は、しかたがないと思いながら人あたりの良さそうな笑顔の仮面をつけ「こんばんわ」と、声をかけた。

「えっと、今ゴミ出しですか?」
「……」

反応がない。急に声をかけられて怪しんでる?

「あ、私は先週越してきた者です」
「……なんの用だ?」

野太い低い声。一瞬、怯んでしまったが冷静を装いながら舞は口を開く。

「えっと、買い物して疲れてしまって少し座ってたんです。用ってわけじゃないですけど、同じマンションに住んでいるんですし、あいさつはするべきかなって思いまして」
「女は、挨拶しない方がいいんじゃねぇの?」

この人は、もしかして気遣ってくれているのだろうか?

「え?」
「ここ単身者マンションだろ? 俺があんたをどうにかするかもって思わないわけ?」

もしかして、いい人かもしれないと思っていた舞は、びっくりして言葉に詰まってしまう。
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